見果てぬ夢 1/5 +和徳城絵図
この頃より、津軽ではある噂っこが広がる。
“為信様は津軽ば治めるお方。津軽の王者だるべぎお方。為信は民の安寧ば求めでら。……民は競って為信さ従うべぎ”
乳井らが仲間の僧侶らさ協力り、村々ば歩いで喧伝。次第に南部氏ばまねとす風潮と併せ、為信への民衆の期待は高まった。
そすて秋が来る。前年とは違い、豊作であった。本来だば年貢をきっちりとるんだばって……特例とすて、その年だけはむったどの半分でいいこととすた。理由は、正月に落成する岩木山神社と百沢寺の前祝いだ。民衆は喜び、為信待望論はさらに沸騰すた。
同ず頃……静かに死にゆく者一人。巷の熱気ば浴びることねく、果たせねかった夢ば見る日々ば送る。
万次だ。
高山稲荷の社殿、そった目立つところさはいね。奥離れた林の中、ひっそりと建つ朽ちかけちゃあ小屋の中。
体調悪いのば仲間らさ隠すため、わんじゃと人気のねところで臥す。
……そすて、木の陰っこから覗く男いた。小笠原だ。万次ばいつ仕留めるべかと企んてら。ばって……病さ罹る人間ば殺すのも、心にさわる。躊躇ってらうちに、日々は過ぎていった。
万次もとっくに気付いてら。たまに来る者らも注意ば促すばって、あえてそのままにさせてらんだ。
いつ、殺されるべか。私の役目は終わってら。
……津軽統一ば先に考えたのは、私が最初だ。“我らが津軽ば征する” と叫んだ瞬間を、ありありと今でも思い出せる。
私は生贄とすて、為信ばも殺すべとすた。ばって、為信は生き残った。
私と為信で違えものは……“運” だ。
ここは潔く、夢ば託すべと思う。
和徳城絵図
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2018/02/15 挿絵に関して
出典元:特集 津軽古城址
http://www.town.ajigasawa.lg.jp/mitsunobu/castle.html
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