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方言版 津軽藩以前  作者: かんから
偽一揆 永禄十二年(1569)正月
9/105

岩木山、雪の陣 3/5

 二人は原野ば抜け、寺()続く山道()あさぐ(/\)(がわ)りば小(だけ)え杉の木で囲み、葉や枝っこさつく雪が揺れ落ちてく。


 寺がどうなってらかはわかる。倒れちゃあ(ふと)もいるべ。すでに昔の初陣で慣れた。武士だば()当然、そうであらねばなんね(_/)


 ……山門さ()る。雪(あけ)く染まり、山法師らがくたばってら。……これまで民から食い物やおなご()(がめ)て、聖域ということ()胡坐()かき、仏の道を極めね(/\)輩。


 ……脇の禅堂より哀すげな声っこ聞こえる。……おなご()わめき()。為信は頭()抱える。”……こいだば(/\)、不埒な法師どもど同ず()でねが()” 為信の(つら)は険すい。隣の面松斎はしゃべった。


「……他国者、特に"はぐれ者"なればこそです。」


 日々を懸命に生きてら。身寄りもねえば、何時のたれ死ぬかもわかんね。今すかできねことばすちゅうだけ。

 二人は一揆の大将である万次のいる仏殿()()る。扉ば開けると、荒れ狂う(ふと)らは(ふろ)い板間でたむろ()すてら()様に()えた。装いの(ちげ)え為信さ、すべでの視線が注がれる。目ばよけるべと()壁際()(つら)()やるど、そこさは縄で縛りつけられてら()法師がおり、体のいたるところから血ば流すて()悶えてら。

 万次は荒れ狂う(ふと)らよりも上段、首の欠けてら()釈迦像の肩()寄りかかっちゃあ。笑みば(/\)浮かべ、饅頭()喰らってら。ここ()気付くと、手に取っちゃあの下()投げ捨てた。


 「おお、為信様(/\)()。」


 大声で二人()(よば)る。為信は(ふと)()かき分けて進む。できる限りの笑みば()浮かべで()しゃべりかけた。


「うむ、ご苦労。今夜(ばんげ)中に引ぎ上げるようにしへえ。」


 万次は手下()指示ば出す。



 すると、すばり()つけられてら()法師らば()殺めで(/\)いく。()()いの方法で。悲鳴は血すぶきと共にねくなる。


 ”……やりすぎだ” 為信に、笑みば(/\)浮かべるだけの余裕はねくなってら。万次は言い放つ。


「当然だ。この話()、この様()、こごさ為信がいるのば()られでらはんでろ。」


 ”……禅堂のめらはん(/\)どもが”


「そうだ。あのまま逃がす(/\)たっきゃ()(わあ)らの噂いぐねくなるべな。」



 ”これが、(わあ)らの流儀だ”



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