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方言版 津軽藩以前  作者: かんから
長子信建、出生 天正二年(1574)夏
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千徳の姫 3/5

 ……千徳の姫。(ふと)質とすて大浦城()来た彼女は、今年で十六()なった。丁重(まで)に扱えと殿が指示()出すてあった故だべ()か。下っ端の侍女だばって()、一番いい着物()まとう。袖にある牡丹の花っこ、ちっちぇ(/\)くて可愛(めご)い。


 為信は、彼女()酒ば(/\)注がせることにすた。隣()()ばって、小瓶()渡す。……だばって()、名前はなんちゅう()んだが。思い出せね(/\)


 “はい。徳ど申すます”


 んだ()。“徳姫” だったな。すまね(/\)。千徳から預かってら()大切な(めのこ)だ。暮らすに不足はねか(\/)


 この時、徳姫は考えてら()。彼女は戌姫付きの侍女だ。すいて言えば……不貞の事実()知っちゃあ()周り(がわり)の侍女も同ずだびょ()ん。だはん(/\)でこそ、戌姫のことで心苦(へずね)え。


 ばって()、今は戌姫のことば(/\)口さ(/\)出すてはまね(/\)。為信の逆鱗()触れる。


 一方で……他の侍女は期待すてら(/\)。彼女だば()……聞き出せるのでねがと(/\)。彼女は同盟者千徳の(めのこ)。無下にはできね(/\)。隣の年老いた侍女などは、体()揺らすて徳姫へと促す。


 徳姫は “まね()じゃ” ともしゃべれ(/\)ず、考え込んでまった()。為信はその(つら)っこ()()で、何かいくねく(/\)覚えた。


 ただ、その横顔……美すかった。()い悩むその表情は……かつての初恋の(ふと)()似て

らった。婿になる(めえ)、石だらけの久慈浜で遊んでら()ころ。目()焼き付いた(ふと)人の女性(めんた)


 丑の刻()()り、酒で酔いつぶれた侍女ら。為信はまんだ(/\)あおり続ける。隣()は徳姫。彼女も他の者と同様で、すでにうとうととすて(/\)ら。


 薄(ぐれ)(ふと)間。灯の油は切れかけ、既に消えてら()とこもある。


 為信の心は晴れね(/\)。その時……徳姫は力尽き、為信の胸元()倒れこんだ。為信は……徳姫の体()無傷の左側で抱え、その場()立つ。わん()つか()引きずりながら……襖()開け、(ふろ)間より去る。


 為信の通った所()まんた(/\)にずみ出てら()血が垂れる。廊下()は、曲がりくねった線が描かれた。


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