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方言版 津軽藩以前  作者: かんから
長子信建、出生 天正二年(1574)夏
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千徳の姫 1/5

 久すく、戌姫の部屋さ()る。横()茶釜が置いでれ()、奥の屏風のアザミはたんげ(/\)重なっちゅう()。それは紫色で、一本一本の毛も余すことねく(/\)描かれてら()


 津軽ではアザミ()食用となす。ただす似たんた()ものさ(/\)ヤマゴボウがあり、口()入れると死に至る。


 戌姫は屏風の手前(てめえ)さ、こちらが()えるように座すてあった。左の手のひらは為信()座りへと促す。為信は刀ば横さ(/\)置き、胡坐()かいた。


 ……静寂が流れる。すばらくすて、戌姫は茶釜の方()退いた。柄杓()()取り、茶ばいれるべとしちゃん()だか。


 その時だった。でっけえ(/\)屏風はこちら側()倒され、(ふと)人の優男が刃()向けた。躊躇うことねく(/\)襲い掛かる。為信は刀()抜く暇ねく()、鞘で身()守った。敵の舌打ちで、唾が(つら)()飛び散る。


 “おい、誰が” と為信は(さか)んだ。すると(さき)たまで傍にいてた沼田など三名が()けてくる。


 敵は為信よりいったん離れ、三人()一挙に相手すた。手筋はただでねく(/\)、かわるがわる翻弄すてく。(ふと)人目は腕ば(/\)切られ、二人目は(つら)ば斜めに血すぶき()あげた。沼田も果敢に挑んだばって()、脇腹()傷ば(/\)受ける。


 いよいよ為信だ。為信は刀()抜き、敵と向かい合った。だばっ(/\)て力量は歴然としちゅう()。敵は襲い掛かり、為信と刃()交えた。ギリリと音ば(/\)立てながら、為信は次第に押されてく。ふと戌姫は何しちゃあ()かと横()()る。その瞬間に油断がたたったか。刀は宙()舞う。


 そすて今にも切られるべどする。為信はその右手()(めえ)さ出すて、身()守るべとすた。……右の手のひらの丁度(ちょんど)上から下まで、一直線に凶刃が()る。経験すたことのねえ(/\)痛みが全身さきた(/\)


 敵は続けざまにもう(ふと)振りするべとする。すると外からはドタドタと家来が集ま(たが)る音がたつ。当主の危機()気付いた(ふと)らがまんた(/\)集ま(たが)り出すたのだ。


 そのとき為信は敵の足()蹴った。予想外の行為()、敵はそのまま体制()崩す。刃持つその手より(がめ)るべと揺り動かすた。敵は奪われね(/\)ように必死に抵抗する。


 その時、戌姫は……為信()、茶碗()投げた。互いの目が合う。

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