亀裂 4/5
逢瀬ば重ねた。豊前屋ば訪ねたその帰り、私は伝也さんの小っちぇな屋敷さ入る。
花咲いたと思えば緑は青々と茂り、黄色い葉っこがひらりと落ちていきます。……伝也さんは、私の心の隙間ば埋めてける。長え時間ばかけて、傷ば癒すてける。
夫とはかつての様に、何もしゃべんねくなってまった。……そえでもいのだ。
……弟たちが死んで、二年経った。私ど伝也さんの関係はまんだ続いてら。夫だば…… “防風” の策さつきっきりだ。
秋の夕暮れ。私はむったどのように伝也さんの屋敷さ行くべどすた。ところが豊前屋の徳司が止めます。
“わっきゃ、なあと成田様の関係ば知っちゅう。……殿さ知られる前に、別れへ。さもねば、私がら伝えます”
秘密の関係、ばれてまってら。私は伝也さんさしゃべります。へば、伝也さんは答えた。
“……為信がら逃げねば、二人の命はね”
どうす。
“……殺すべ”
私の心は、為信から離れてら。ばって……殺すだなんて。恐れ多いことだ。へば伝也さんはしゃべります。
“あくまで、為信は大浦家の婿だ。私が代わりさなって、おさまればい”
……そったこと、できっこね。為信を殺せば、他の家来たちがすぐに駆けて来るびょん。目の前で伝也さんが倒れるのば見たくね。……人が死ぬのはこりごりだ。
“大丈夫。そん時はおめが、大浦の一人娘どすて私ばかばってけれ”
伝也さんは決意ば固めたんた。……私は、信ずるすかね。
もす……伝也さんが殺されてまれば、私も一緒に逝きます。