亀裂 3/5
為信は変わってまった。私さ慰めの言葉っこばかけてけるばって、本心とは思えね。
……子ができれば、わんつかは違ってくるべか。夫と会って五年。結ばれて一年。夫の来る回数は減るばす。もちろん、忙すいのはわかります。
そった私のしゃべる相手は、むったど弟たち。鼎丸と保丸、二人はたんげ可愛くて、まるで私の子供のよう。……今はふとりぼっち。
心の隙間ば埋めてえ。そう思った。すると侍女らは言います。
“最近、中央で茶道が流行ってらと聞いちゃあ。領内では、城下の豊前屋という商人が嗜んでらそうだ。一度、顔っこば出すてみだらどんだべか”
聞いたときは、正直行く気さなれねかった。日々ば泣いて過ごしちゃあ。瞼|ば閉ずると、かつての光景がまずまずど見えてまる。まんた開くと、何もね。
……すばれる冬は過ぎ、春ば迎えた。夫は北の方さ行くようになった。なんでも “防風” の策ば練るとしゃべり、私と会うことはめっきりねくなった。わざと避けてらんだべか。
私はこの時……侍女のしゃべってらった “茶道” なるものばやってみようと思い立った。豊前屋さ数人の侍女と共に出向いた。
すると徳司なる者ば中心に五人の男がおりますて、茶道の稽古ばすてらった。今回は男だけだ|ばって、いいところの淑女も来るそうだ。
椀さ注がれたお茶は最初こそ渋いと思ったばって、後になって舌の上さほのかな味わいが残ります。
心の隙間ば埋めるには相応すいものと思えたのだ。
それからというもの、豊前屋さ入り浸った。夫も許すてくれてらし。
すばらぐすて……私は出会ってまった。そのお方は、成田伝也というお侍だ。きっと大浦の家来なんだべ。
……恋さ落ちてまったのだ。




