亀裂 1/5
綱則はしゃべる。
「わーは父さ伝えだのだ。鼎丸様ど保丸様、そすて殿。どうあんべがど。」
為信は黙って聞く。
「将来、どった形であれ、為信様ど二子が争うごどさなれば……誰もが苦すみます。」
“そごで、“兼平盛純”どいう人物の出番だ。気の病さ臥せってら己が、二子ば連れ出すて自分ごど沈む。皆は、気が触れだんだがど思ってけるべか”
“それに……かわいそうな我娘。早ぐ傍らさ行きてえ”
静かな空気が流れる。
為信は、綱則さ酒ば注ぐ。
綱則は、泣くのばまんず抑えてら。杯ば、がばっと飲み干す。
……わっきゃ、犠牲の上さ成り立つ。なんとすても生き残んねばと思ってらばって、こうすて自ら死んでく者もいる。
兼平は体ば捧げて、最後の奉公ば果たすた。
尊敬する。
……葬儀は始まった。為信は喪主とすて、戌姫は母代わりとすて弔いば受ける。……短えうちに人が多ぐ亡くなった。養女兼平の娘は戌姫と姉妹同然。科尻鵠沼はかつての家来。そすて……鼎丸と保丸。
大光寺城の滝本は、為信の前さ出でる。睨みつけ、罵る。
“おめの企みだべさ”
戌姫は、隣の為信ば見る。為信は固まる。
“なっきゃ、お家ば乗っ取った”
綱則は口ば出そうとすばって、為信は“まね”と制する。不毛だ。




