岩木山、雪の陣 2/5
為信は家来たちさ頼む。
「なあ……こごは私さ話しっこに行がせでけねべか。」
家来たちは互いに顔ば見合わせ、口々に馬鹿にすてら声漏れる。森岡はその癇癪ば押さえつつ、荒れちゅう肌の面ば引きつらせながら、為信ばまずまずと見た。“はあっ” とため息ばつき、"何ばしゃべってら、この若えもんが" ど言わんばかりだ。
「話っこさ応ずで、引ぎ上げるんた輩には見えねばって……。」
為信は続けた。
「私さ、秘策がある。」
まんず自信があるように言葉ば発すたばって、森岡は一笑にふす。
「なあは大切な御身……鼎丸様がおがるまで、大浦家のお殿様でねきゃまね。」
“そったお方が単身で乗り込むなど……甘くせくねえが”
同ずく周りの家来たちも続けた。
……ここで森岡は考えた。……一つ試すに、やらせてみようかと。
「まあすかすだな……これも経験のうぢ。行ってみなされ。」
“もす戻ってごねでも……幼主鼎丸様ば周りの家来で盛り立でるはんで。ご安心してけろ”
為信の心は、煮えたぎっちゃあ。森岡はわざと聞けるか聞けねかの小声でこった風に挑発すてきた。……ここで腹っこ立てて争いばおかすてみろ。説得どころでねくなる。
為信はまんず落ち着いたふりっこすて家来衆と別れた。
広い原野さでる。一面の白え世界。その先さ杉の山がある。ところどころ元の色っこ見え隠れすてら。
一人、あさぐ。付き添いの者もつけれねえで、ただ孤独であった。ここでくたばればいのにと思ってら者もいよう。"……絶対に、でがして帰るのだ"
向こう側から、一人馬っこさ乗ってくる。……面松斎だ。
為信の顔は、どうなっちゃあんだべ。
制作に関わりました編集者です。ありがとうございました!
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