二子殺し 2/5
秋さなって、浅瀬石より人質が送られてきた。千徳政氏正室の富子と一男一女。
息子は政康と言い、今年で一五歳。父は元服ば急がせたんたで、為信の家来さ加えだ。娘は徳姫と言い、一四歳だ。まず戌姫の侍女さした。
これで大浦家はたんげでったらだ勢力さなった。大浦領内だけでねく旧石川領と千徳領も併せると、津軽の半分ば占める。残りっこは大光寺滝本領や浪岡領、他のちっちぇえ領主らだ。
この状態さ滝本は危惧する。旧石川領も正式に認められてまった。為信の力は増えるばす。こいだば “治水” の件で好きなようにやられてまる。民ば豊かにするために適うのはわかるばって、代々大光寺は舟運の民から支えられてら。彼らが嫌がるんたば、助けるすかねのだ。
かといって、為信さ抗える有効な手段はね。なにかちっちぇえ綻びでも見つけるべと、滝本は大浦城さ間者ば紛れ込ませた……。
……夜、大浦城では為信の書室さ家来が集まる。八木橋が呼ばって、森岡と沼田も集う。病床の兼平の代わりとすて、息子の綱則も加わった。何ばしゃべるというんだか。
火は灯された。
最初に、八木橋は森岡さしゃべる。
「森岡殿……怒んねでけ。」
森岡は怪訝そうに八木橋ば見る。
「……話さよるばって。」
「まいね、このだびは約束すてけれ。」
八木橋は森岡さ迫った。森岡は怪すく思ったばって、とりあえずは頷いだ。
為信も、八木橋のしゃべり出す内容ば知ね。沼田も同ずだ。
一息つき、八木橋は始めた。
「……殿の立場についでだ。外のごどは落ぢ着いだばって、中のごどは片付いでねえ。」
“中” とはどったことだ。森岡は問う。