二子殺し 1/5 +大光寺城絵図
次の日、八木橋は三戸さ出立すた。数人の家来を共に、東へと道ば進む。
後ば見送ったのち、為信と沼田は城で一番高え櫓さ上った。下さは広い平野、賑わう町、人の行きかう姿っこが見える。高えところさいでも暑いのには変わりねえばって……風がそよぐだけいいんだか。
為信は、独り言のようにしゃべる。
「“防風” ど “治水” がなれば、田畑は広がる。田畑が広がれば、万民が土地ば持づようになる。万民が土地ば持でば……在来の民ど他国者の差はねぐなる。」
万民……つまり、田畑が多くなれば他国者にも土地ばけれる。貧民も豊かさなり、浮浪することもね。万次党のような……徒党ば組む必要もねくなる。
沼田は、“はい”ど だげ相槌ばす、為信ど同ず方ば眺める。
「わっきゃ、まだ甘えが。」
為信は不安そうに沼田さ問う。沼田はゆっくりと首ば振る。
「そうが……。」
雲一づね空。終わりの暑さば楽すむ。
「……わっきゃ、殺すつもりだ。」
沼田は、万次のことがと思った。二度目だばって、改めて何ばしゃべるのが。
「鼎丸ど保丸、いずれは殺す。」
おもわず沼田は、持ってら扇子ば落とすた。それは高え櫓からひらひらと、宙さ漂いながら落ちてく。
「家中での争いは、民ばも苦すめる。南部の内紛ば見でもわがるべ。」
"はい。しかし……"
「昔どは違えんだ。」
そうしゃべると、為信は梯子で下り始めた。沼田はだまって後ば従う。
まさに今、梟雄にならんとすてら。
大光寺城絵図
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編集に関わった方です。ありがとうございました!
まほまほ
@maho_maho13
2018/02/15 挿絵に関して
出典元:特集 津軽古城址
http://www.town.ajigasawa.lg.jp/mitsunobu/castle.html
鰺ヶ沢町教育委員会 教育課 中田様のご厚意こういに与あずかりまして掲載が許されております。小説家になろうの運営様にも、本文以外でのURL明記の許可を得ております。
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