命乞い 4/5
八木橋の続けざまにしゃべる様ば見て、隣の森岡はばすっと怒鳴った。
「八木橋。殿がしゃべるでねど申すたでねが。わんつか慎め。」
頭の回るんは認めるばって、殿さは殿のお考えがあるのだ。森岡は八木橋さ諭す。八木橋はというと、元はお前が私さ話ば振ったんだべさと思ったばって、まんずは口ばおさえた。
森岡はため息ばつく。そすて向かいさ座る沼田に問うた。お前はどう思うと。沼田は一回だけ礼ばす、ゆっくりしゃべり始めた。
「大浦家は大きい存在になりました。……偶然にも騒動を治め、旧石川領を併せた。このようなときです。独立どうこうと申すよりも、周りをもうすこし見るべきかと。」
周り……。
「はい。特に新当主がどう思われているか。不穏な動きがあるなしに関わらず、旧領の返還を求めて来たらどうなさいます。」
南部信直は南部の新すい当主。彼の一存でまるっと決まる。もす彼が為信ば倒せといいづければ、自らは動かねでも孤立は免れね。滝本だけでねく、立場復活の機会だとすて千徳も攻めでくべ。例え津軽統一ば進めっとすたとこで、四面楚歌ではきつい。
ここで為信は口ば出す。
「沼田のしゃべるとおりだ。信直公がどった考えだが、今一度確かめる必要があるんた。千徳のごどよりも大事なごどだべ。」
“八木橋、行ってみるが”
八木橋は “私だか” ど驚ぐ。本来だば兼平が適任だばって、今は臥せってら。森岡はこったこと苦手だべし。お主だはんでこそ、頼めることだ。
彼はすばらく黙ったままだったが……隣の森岡さ肩ば叩かれた。なんも怒ってねえ。わんつか笑顔で、まるで“行ってごいへ”どしゃべらんばすの顔っこだった。
かくすて、八木橋は信直のいる三戸に向かうことさなった。千徳の件は明日するとすて、話す合いばお開きさすべかとしちゃあそん時。家来の一人が外から駆けてきた。
「千徳政氏様、自ら参上すちゃあ。」
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