命乞い 3/5
森岡は八木橋さ問う。
「そえで、我らはどうすんだが。」
八木橋は再び苦笑すた。そすて為信ば見る。
「滝本様よりも早ぐ、千徳ば討づごどだ。先に浅瀬石ば攻略し、滝本様さは退却してけれと。」
本来だば共同で兵ば動かすばって……一歩間違えれば約束違反だとし、大浦と滝本で戦が起きる。為信は八木橋さ問うた。八木橋は強めに言葉ば発する。
「いずれは戦うごどさなる相手。津軽統一のだめ、障害さなる。自明の理でねが。」
津軽統一……それは最終手段。わんつか前、為信は滝本さ意見すた。津軽ば豊かさすために必要なこと。それは “防風” と “治水” だと。
“防風” とは、浜辺の屏風山さ木々ば植えること。しゃっこい海風ばねくすことにかって、作物の生長ば助ける。主に大浦領内のことだはんで、好き勝手やってけれという。
ただす、“治水” はそうはいかね。津軽平野ば流れる岩木川。治水ば行い、田畑ば広げる……口では簡単にしゃべれるばって、様々な利権が関わる。川の流れば変えることさは、川辺さ住まう領主や舟運の民の反発がある。大光寺は代々こった者らど近えはんで、滝本どすても賛同することはできねかった。
これら問題ば解決する一つの方法とすて “津軽統一” がある。一人の強え領主の元、改革ば推す進めるのだ。すかも南部家中の争いにかって動揺せず、自立すた大名どすて。
為信はそこまで考えたばって、すぐに打ち消すた。まんだ話す合いの余地は残ってらし、無下に戦さ持ち込むべきもんでね。
為信は八木橋ば制する。
「簡単にそったごどば口さすんでね。」
八木橋は逆らって、次さ続けた。
「信直公どで津軽がどうしちゃあどごろで、山ば越えでまで動げねびょん。勝ったばって、九戸兄弟はまだ健在。不満ば持づ者もたんげいたんた。」




