命乞い 2/5
夏はそろそろ終わるべか。穂が垂れるには早えばって、きたる収穫が待ち遠すい頃合い。
大浦城では、家来ば集めて話す合いをしちゅう。広間の上座には大浦為信。手前さは森岡や八木橋は当然のこと、新すく沼田祐光も座る。誰ば家来さすべとも、反発する者はいねくなってら。
……為信は家来の顔ぶれ|ば見る。二人ほどいるべき人がいね。兼平と小笠原だ。為信は森岡さ問う。
「はっ……。兼平殿はその……臥せってら。」
伏せる……。どこか調子悪いんだか。
「いえ……先の騒動で、娘ばねぐすてらはんで。気の病だべ。」
娘が嫁ぐのは誰もが通る道。だばってまさか毒殺さ巻き込まれるなど……誰が考えるべか。“仕方ねえな” と思いながら、次に小笠原のことば訊く。
「はい。……武者修行どが。」
内実は知っちゅう。小笠原は万次ば確実に仕留めるために、大浦家ば離れた。性格からすて、逃げたんでねことだけはわかる。……もちろん、他の者は沼田以外知ね。
森岡は一旦落ち着くと、手元さある長え文章ば手さ取り、本題さ入った。むったど兼平の役目だったばって、彼はいね。代わりに役ばこなす。
「さで、浅瀬石の千徳ばどうすが否が。意見のある者はしゃべりへえ。」
森岡はそうしゃべると、すぐに隣の八木橋さ顔っこば向ける。心積もりがある前提だ。八木橋は苦笑する。
「千徳の仲だがいの噂っこは前々がら聞いちゃあばって……まさが我らより滝本様が先手ば打づどは思わね。」
為信は頷く。
「このだびは滝本様の手柄。大浦家が旧石川領ば持ったように、滝本様が浅瀬石ば持づごどさなるべ。」
そうなれば、滝本の力は強まる。いづが大浦の敵になれば恐ろしい。あの武勇知略さ優れる男……味方だばたんげ心強えが。
そった彼は大光寺の遺子ば抱え、ずっと忠義ば果たすてら。




