運の強さ 3/5
風向きは変わる。九戸らは逆に攻められてまって、城ば包囲されてまった。そのうち雨が降り始め、城中はたんげまね気分が漂う。
九戸勢は西さ密使ば送り、救援ば求めた。千徳氏や万次党さ届けられたばって……こちらも旗色がいくね。科尻と鵠沼が主導すた堀越騒動は、為信が見事に鎮圧。九戸勢が完全勝利する前提で動いてたはんで、目論見より外れてまった。
すかも為信は、黙ってらだけでね。手始めに鯵ヶ沢さ兵三百ば置き、家来の秋元ば現地さ送った。
科尻と鵠沼があんきの兵ば動かせたのは、決すて万次党のみの力でね。資金面で大商人の理右衛門より融通ば受けてらと思われる。十丁の火縄も問題だ。戦で用いられたものだが……為信さ嘘ば付いてらことさなる。
“一丁手さ入れるだけでも大変”
“一丁だげ持ぢ合わせでらはんで、殿が使ってけれ”
このようにしゃべっておいて、裏で万次らさ十丁も渡すとは……許すがてえ。グルだ。
秋元は徹底的に、理右衛門の動きば監視する。目立った動きは見受けられねかったが、文句ばしゃべってく。
“わーがいねば、津軽さ新すい商品が届がねぐなるべな”
為信は考えだ。だば他の商人ば城下さ呼ばってまれと。これまでの状態がおかすかったのだ。一軒のでけえ商家が独占し、物品ば取り扱う……値ば吊り上げ放題でねか。結果とすて銭ば損させ、民の困窮が増す。
理右衛門は腹黒え。これまでわっきゃまんず簡単に、手玉さ取られてらんだ。情報ば小出にだすて親密さば求め、火縄ば一丁だけ与えて満足させる……私が甘ちゃんだったとしゃべられればそこまでだばって……どうすたものか。他所から商人ば集めることにすた。
すると……商人の耳の早さは恐れ多い。すぐさま秋田より豊前屋徳司と申す商人が参上すた。大浦城下さ店ば開かせてけれという。
こやつ……まさか安東の差す金かも知れねえが……乗ってみよう。理右衛門とこの豊前屋ば競わせ、物の値ば下げる。理右衛門だけに儲けさせはすね。




