家来を斬る 3/5
“甘さなどね” と示すた。んだばなすて、二子ば助けるんだか。
わかんねえうちに鼎丸と保丸共々石川城ば攻めて殺すてまれば、後継者はただ為信一人。立場は保たれ、家督ば譲る必要はね。後々に何かすらで争う可能性もねくなる。兵力にすてもこちらは千五百さ敵兵五百。後に来る大光寺の滝本勢ば併せ二千以上。戦えば勝てる数だ。
だばって、敵兵ばすべて己の下さできるとすれば……。元は大浦家の名でかって集めちゃあ軍勢だ。喜んで為信さ仕えるびょん。こちらの犠牲も出さねくて済む。
二子が城中から居ねくなればどうす。科尻と鵠沼は、支えばねくす。兵らさ乳井の仲間ば通ずて、不義の輩だと吹き込む。そうなれば、逃げ出すすかね。
加えて、二子の命ば今は保った方がい。助け出せたことで、自らの信用は増す。
乳井さは、為信がぼんやりとすて見えちゅう。それは……表情まで力が回ねだけだ。頭脳をがばっと働かせるとこで、とうとう顔の動きば放棄すた。
生きるために、考える。
“生ぎでごその大事”
生き残らねと、己が叶えてえことば実現できね。
何ば成せばいいんだか、必死になって考えてら。だはんでこそ、ぼんやりとすて見える。
……全て、為信の目論見通り進む。二子は夜の闇さ紛れて城から抜け、為信の本陣さ着いた。科尻と鵠沼は数日の間は城中にこそいたばって、とうとう五月十日の夜に脱出ば試みた。
その様ば見た城中の兵らは “逃げるんだか” と罵り、ついには捕らえてまる。そすて外の軍勢さ降伏、科尻と鵠沼は差す出された。
翌日、滝本軍も現地に合流すた。二人の罪人ば目の前に、どうすべかと。滝本にとっては主君殺すの大悪人。為信にとっては……昔、火縄の訓練ば手伝ってくれた家来。
彼らは目で訴える。
“殿に、俺らを殺せるのか”