家来を斬る 2/5
津軽さまんた日っこ昇る。それはいつすか高く輝き、やがて西の彼方さねくなる。人に生あれば、死があんのと同ず。
誰問わず寝てね。大浦城では朝早く、まんた軍議が開かれた。
焦点は、石川城ば攻めるか否か。
大浦ば騙り、郡代ば殺すた。その罪は重で。ただすあちらには主筋の鼎丸と保丸がいる。攻めるのも、義さ伴わず忠でね。
為信さ、家来一同は決断ば迫った。
”はえぐ石川城ば囲みへ”
大浦軍千五百は、その日の内に石川城ば取り囲んだ。大浦が大浦の軍勢ば囲む事態さ、“救民” の兵士らは困惑すた。元々は大浦家が兵ば集めちゃあはんで参加すたのに、この事態はなんなんずと。動揺が広がった。
科尻と鵠沼は、逃げ出そうかと相談する始末。ただ……もうここまで来てまった。山の向こうの九戸らが信直ば倒せば、ここさ援軍が来る。それまでの辛抱だ。なによりも鼎丸と保丸はここさいる。
……城の外。大浦の本陣よりわんつか離れたところ。小高え丘の、でったらだ木の元。なんの木だべか……名っこわかんね。枝には、黄色いちゃっこい花がついちゃあ。
為信は乳井と立って話ばする。
「約束する。岩木山の復興は、大浦の力でかって成す遂げる。」
乳井は応ずだ。
「わがった。仲間らど通ずで、二子ば外さ連れ出すます。」
ここで、為信はため息ばつく。木の根元さ背中ばかけ、ぼんやりとすだすた。
乳井は、いますぐ立ち去っていいんだかと戸惑う。毒気もまんだ抜けてねえのか。
……それは愚かな間違え。
頭の中はたんげ冴えわたる。すかも為信の心うちは、以前と以後でまんず異なる。甘さは既に消え失せた。