死に賜う 4/5
夕暮れ、日は落ちかける。為信は一人、厠で気ば取り戻す。
体のあちこちが痛え。ばってわんつか楽さなったか。
大広間さ向かうべと、厠の戸ば開ける。
……まんず黒い血で、壁さ弧が描かれる。これは刀の先端から、勢いよく飛ばされたか。廊下さは、手ぶらの人が倒れてら。それも一人でねく、二人、三人……。傷は深く、骨まで見える。
ここさ、生きてら者はいね。
大広間には、名士らが哀れな姿となっちゃあ。為信は大光寺の体ば起こす、顔っこば覗いだ。灰色さ変わってまり、口周りに血がこびりついちゃあ。……毒のせいか。政信も同ずだった。
”こったごど、誰がすた”
”なして”
”何の恨みがあるんず”
遠けで、足音がすた。為信は部屋の奥まったところに身ば隠す、刀の鞘さ手ば当てる。
誰が来。
襖の向こうで、足は止まった。
敵か、味方か。
…………
……おっかねえ顔の男、武具ば身に着けた姿で現れた。その場で片膝ばつき、為信さ一礼ばする。
「えがった、ご無事で。」
為信は問う。薬師は答えた。
「生ぎでらど、信ずでました。」
”……今は逃げるべ。早ぐ大浦城さ。家来が苦しちゃあはんで”