初めての策謀 5/5
……入る機会ばうかがう。
障子の向こうで光っこ漏れる。中さいるのは十人ぐれえか。各々真剣に、裏返された茶碗ば見つめてら。
万次はその茶碗ば揺り動かすた。賽子は中でコロコロと音ば立てる。万次ががぱっと “蓋” ば開けると、周りの者はそれぞれの表情ば浮かべる。笑う者、泣く者、叫ぶ者。酒も入ってらはんで、感情の起伏がでけえ。
負けた者から、じぇんこばとる。勝った者さはじぇんこば与える。……ここでは在来の民と他国者、平等だ。
万次は面松斎さ気付く。幽霊みんた奴だなと早速からかった。障子の隙間から見えたもんだはんで。彼はその皺だらけの顔ば面松斎さ向けた。
面松斎は万次と共て、荒れ野ば海の方さ歩ぐ。
万次は問う。
「……そのわげもん、信用できるんだか。」
面松斎は答えた。
「はい。見込みある、素晴らしい青年です。」
南部の家来衆には珍すい、我達のことも見てける人物。なかなかいねえと。万次は問う。
「そえで……禄ば、けるど。」
面松斎は "そうです" と続けた。万次の顔は普段から悪人の面構えでれ……たんげ危ね橋ば渡ってきた彼の、人生そのものだんた。
万次はしゃべった。
「んだ。乗ってけるべ。」
……いいんたなら、為信の大浦家ばも乗っ取る。万次は失敗すた時の損よりも、成功すた時の利がはるかにいいと判断すた。
「やるんだば、華々すく荒らすべ。」
万次はひらめいだ。為信の手前、領民ば殺すたり財ば奪る事はまねびょん。ただ一つ、許される所。……それは岩木山。
そこは、大浦家の領内だ。加えて山法師女ば連え去って、不犯の定めば破ってらと聞く。そこへ我達が押す入って、法師ば倒す。ついでっこに役得さ預かる。
支配者層がこれまで手出すできねかった “聖域”。どんき乱れていようとも、静観するすかねかった。そこば潰すのだはんで、為信にとってもいいことだべ。
万次は他国者ば中心に、仲間を集せた。
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