死に賜う 3/5
苦すみは増す。一人、厠でうずぐまる。助け呼ばるど思ったばって、声っこ出そうとすと今にも吐きそうさなる。だばって吐くべとすも、わんつかもね。嗚咽のみ出る。
“これは、心の苦すさだげでね”
為信は気付いた。
“……んだば、何あだったんだば”
息苦すさ、鼓動の激すさ。目さ映るは政信の顔。耳さ入るは大光寺の声。
“……毒が”
それ以上のことば、考える余裕などね。胸元さ潜めてら毒消すの薬ば、包み紙よりがぱっど喉さ流す込む。
為信は、意識ば失った。
……堀越の別荘は、地獄絵図。為信だけでね。
津軽郡代の石川政信、重臣の大光寺光愛ら十数の名士らも、もがき苦すんだ。政信さ嫁いだ久子も、共に接待しちゃあ侍女らも犠牲さなった。
無事だった者たちはたんげ慌て、なすすべば知らね。そうすちゃあと、外さ軍勢が沸いだ。白地に “救民” と書かれた旗がなびき、五百ほどの兵士は堀越の別荘さ突入すた。
中の者は武装すてね。あっけねく倒されてく。すかもその多くは武士でねく、生き残っちゅう使用人らだった。まさか、己の人生が戦で潰えるなど思ってね。
“救民”の軍勢は、早くに堀越ば攻略。次に石川城さ向かった。そのころさは石川さも異常が伝えられてらはんで、急ぎだばって弓や刀の準備が整ってら。主はいねながらも、郡代の本拠らすく争う構えば見せた。
軍勢は、城への攻撃ば始めた。火縄の爆音も轟く。まんずは十丁あるべか。軍勢の中でも野蛮な者等は、城下の家や屋敷さ住まう兵士の家族ば襲う。
千徳の援軍も到着す、数は増す。石川城の士気もがぱっど下がる。
城門は壊され、中の者は斬られてく。
ついに、陥落すた。