死に賜う 2/5
膳が運ばれた。すべでの食器はずんぶ赤え色っこで、漆が光っちゃあ。椀の模様は二羽の鶴。汁は透き通り、たんだちゃっこい葉っぱが一つ浮かぶだけだ。
大光寺は天井ば見でしゃべる。
「毒見は誰がいべか。」
為信はすぐさま返すた。
「わーがいだすます。」
政信は頷く。
為信は政信の前さ進む。椀ば両手で持ち、がぱっど汁ば飲み干す。ここで、味わう必要はね。
政信はこれまたわざとらすく、大光寺ばすかりつけだ。
「これ、大光寺。大浦殿の全快祝いなんだはんで、その “主役” さ毒見ばさせるどはなんなんだば。」
「すいませぬ、若。大浦殿がまんず手付げるの早ぐ、止める隙もねかったんです。」
場は笑いさ包まれる。ここで為信がおどける。
「申す訳ねが、もう一杯けれへえ。がぱっど早ぐ飲みすぎだはんで、十分に味わってねえんだ。」
昼からの宴は和やかに進んだ。
途中で政信は、自分の城から連れてきた侍女らば広間さ招き入れる。皆に接待ばさせるためだ。
政信の隣さ久子が侍った。為信と目っこ合う、哀すい視線、無言の訴え。政信はその様ば知ってらか知らねんだか、久子ば腕で己の体さ寄せる。酔いに任せで抱き付き、口吸いばする。目は為信さ向けながら。
その様ば見たはんでか、為信は胸さ違和感ば覚える。なんだべか、これは……。
“冷静に冷静に……心静まりへ”
そのうち、鼓動の激すさが加わる。これはまねと、厠へたつ。がわりの者は “便所が” と為信ば指さしあざ笑う始末。酒の呑みすぎて吐くんだべかと考えちゃあか。




