不穏 4/5
悪寒で震え、ひたすらこごえる。とてもじゃあねえばって、布団より外さ出ることができねえ。為信は病さかかり、寝所にて休む。
そこさ、妻の戌姫と養女の久子がやってきた。今は母親と娘のなんだばって……まるで姉妹のよう。現に彼女らは二つすか齢っこ離れてね。為信は早くも父とすて、子ば送り出すことさなった。
侍女は額より袋ば取り換える。最初は氷だったばって、今ではぬるま湯と化しちゃあ。戌姫は“変わるが” と侍女さ聞くばって、断られてまる。なすてなら娘の婚儀さ付き添うんだ|はんで。病ば移してはまね。
「……ついでけれねぐで、すまねえ。」
為信は久子さ謝った。久子は首ば振り、“お気持ちだけで、十分だ” と応えた。ばって、心の中はたんげ複雑いびょん。お家のためとはいえ、若くすて親元ば離れるんだはんで……。
為信はやっとのことで体ば起こすた。そすて久子さしゃべりかける。
「わーも、おめど同ずぐらいの時に親元ば離れだ。嫁ぐだば、いづがは通る道がもすれね。」
“……覚悟いだすております”
雪深え中、祝いの列は発する。親代わりとすて戌姫は石川城まで送る。……実の親である兼平は、高え櫓から列ば見づめる。ついて行がね。取り戻すたい気にさせられるはんで。今でさえ、手ば遠けへ伸ばすてら。 “……老いだんだな” と、己の眼ばぬぐった。
……物音静まったのち、為信は深え眠りさつく。これまでの疲れが噴ぎ出てらかのよう。夢ば見ることもね。
目覚めると、傍らさ男が座ってら。いかつい顔ばしちゃあ。床には白く塗られてら木の箱が置いてあり、小皿やすり鉢が手前さ用意されちゃあ。
侍女はしゃべる。
「薬師様がお待ぢでございます。」
“おお、そうが。それはすまねがった”
為信は、そのわんつか楽になった体ば起こし、薬師の方さ曲げた。




