不穏 2/5
兼平はしゃべる。
「一周忌さは、津軽の主要な者らが集まります。そごば謀られば、たぢまぢ危ねど思ったんだべ。大浦家は企でるはずだべど……。」
まんずは疑いば晴らさねばなんね。事態がまねくなれば石川から、ひいては津軽すべてから攻め込まれかれね。
ここで、とある一人が手ば挙げる。知恵者の八木橋であった。
「弟の政信公ば説得すには、兄信直公の意ば示すのが一番がど存ずます。」
今は大光寺の訴えにかって、弟政信の気持ちは疑いの心でいっぺえだ。だば兄信直さ助けてけとすがる、政信ば窘めるように一筆ば書いてもらう。
信直は為信さ恩義もある。いい策だべが……これには問題がある。兼平は懸念ば示すた。
「北路だば野辺地ど七戸、南路は三戸ば通るばって、これら場所は九戸派でひすめいでら。八戸さ着ぐまでに咎められでまる可能性があり……決死の覚悟が必要だ。」
為信は腕組みばす、顔っこばすかめで悩む。他の者も同様であった。そったとき、末席の方で二人が立った。そすて大声でしゃべる。
「この儀、われらにお任せいただけないでしょうか。」
科尻と鵠沼だった。
最初に科尻はしゃべる。
「他国者であれど、大浦家に仕えることができ感謝しております。ただしそれは小笠原殿おひとりの力が認められたにすぎませぬ。」
続けで、鵠沼がしゃべる。
「ここで我らの度胸をお見せして、大浦家のために尽くしとうございます。」
上座側、それも森岡の隣さ小笠原は座ってら。彼はなすてか感動すてらんたで、むったどの仏頂面だばってすきりに頷いてら。その様子ば見た為信、二人に八戸さ行かへることにさすた。
為信は二人さ声ばかける。
「遠路、それに雪っこ積もる中の使いだ。寒びばって、事は重大。頼んだぞ。」




