不穏 1/5
新年ば迎える。南部晴政はまんだ生きでで、ずんぶすぶてえ。……それはそれで、いことだべか。当主が死なねことにかって、恐れてら全面戦争は起きねびょん。
大浦家では正月の宴が済み、為信と戌姫は寝室にて隣で寝ちゅう。ふと、義弟の話っこさなる。
「鼎丸は今年でなんぼだ。」
「十だべな。」
ふむ……。いずれは、家督ばけねばなんね相手。ただす最近では “このまま優秀な為信様のままでもい” としゃべる家来もいる。もちろん鼎丸家督ば継いでも、彼が優秀とは限ね。そうだとすても己は補佐役さまわり、皆で支えてけばいこと。
為信は戌姫さ約束すた。
「数年だでば、南部家内の争いも収まるべ。その時に晴れで、鼎丸には家督ば継いでもらう。」
すでに分別ある歳だ。以前のようなすれ違いはねえし、まんずは仲もい。きっと大丈夫だべ……。
すばらぐすて、大浦家さ難題が降りかかる。
発端は石川高信公の一周忌。津軽に住む家来衆らが堀越の別荘さ集まり、法要ばす計画だった。そこば止めにかかっちゃあのは石川家随一の重臣、大光寺光愛。なんと大浦家さ謀反の疑いがあるとすて、法要ば延期すべと津軽郡代の石川政信さ訴えた。
為信にすて見れば寝耳さ水だ。確かに己の出身は久慈氏で、久慈の家は九戸派だ。疑われるのは無理ね。ただすそんきでねかった。
“大浦家は山奥で秘密裏に兵ば集めちゃあ。先の軍事演習もすかり、反旗ば翻すための行動どいえよう”
野崎村焼討、そのように映ちゃあか。無論、新たに兵は集めでね。……後悔すても始まんね。為信は城の広間さ、がっぱと家来ば集めた。
皆々、悔すそうな顔っこばす。