初めての策謀 4/5
為信は問う。それはどった意味だかと。
面松斎は古え本っこば開き、文字ば指す示す。
『……誠がありて恵み深きならば、問ふまでもなく大いに吉。誠がありて徳を恵むのなれば、民も信頼す……』
"元より私は為信の才覚を信じている。……決めた。どうとでもなれ。為信と心中する"
「為信様。この儀、他国者の民にとって大変利益があります。我らのことを気にかけてくださる殿でございます。……皆に協力するように話してみます。」
面松斎は手ばつき、為信さ向かってひれ伏すた。為信は家来にもこったことばされたことがね。たんげ、慌くふためいだ。
「面松斎殿……そったことばされると困る。」
面松斎は顔ばあげた。んだば……まんず為信は困った顔ばすてら。これでもかという顔っこ……。おもわず笑ってまった。
為信も最初は “何がおがすい” と思ったばって、つられで笑ってまった。二人の楽すげな声は辺りまで聞けた。
外にでると、雪がちらつき始めちゃあ。すばれる冬がやってくる。今年はむったどより遅え。
面松斎は、帰る為信の後ろ姿さ声っこばかけた。
「 “風雷益” でございますれば、私欲に走るような真似をすればたちどころに運を失います。くれぐれも正しき鏡を忘れぬよう。」
びゅーっと海風が荒れ野ば通り抜けて、鳥居や屋台さ吹く。今夜は理右衛門のとこさ泊まるのだか。舟っこ海さ浮かべれば数時間で着く。
"……私も万次様に話さなねば。どのようなご判断を下さるか"
万次は、的屋の元締め。背中には登り竜の刺青ば入れてら。基本、面白そうな話には乗ってくるばって。すかも今度のことで仲間の命ば失うことはね……はずだ。ふりばするだけなんだはんで。
彼は仲間らと、稲荷の社殿で賭け事ばしてら。何もわかんねえ者だば神聖な場所と思うばって、実は違え。生臭え、下衆の集る荒れた場所だ。
面松斎は障子ばわんつか開く。
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