火は放たれた 1/5 +種里城絵図
"目標” とは、白え旗のことだ。村のどっかさある、それば先にとればい。
兵らは兼平と森岡の元にわかれ、それぞれ向かってく。実はいうと二人も旗が今どこさあるかわかんね。村人がこの軍事演習ば手伝ってで、時間が経つたんびに旗の場所ば変えてらからだ。
……ここさ、“敵” はいね。心の何処かに安心感はある。まんずは訓練だはんで、相手より先に旗ば獲ろうと勇み足さなる兵がいた。そいづらに、兵ば統べる力はね。
村さ入ると早速、仕掛けの洗礼ば受ける。隠さえちゃあ “筒状” の道具から、一直線に水が浴びせられた。北風吹く中、しゃっこい水だとこで体ば寒がらせる。……実戦だば、すでに死んでらはず。
その道具ばもって、数人の村人は村の奥さ走って逃げてった。“白え旗はこごさあるぞ” と呼ばる。兵らは後ば追った。へばまた横から水鉄砲で浴びせられる。
賢い者は気が付いた。この水鉄砲は、火縄そのもんだと。能のねえ猪武者は火縄の前で役立だず。なんぼ白い旗が取れたとこで、濡れたまま御前さ立てば、決すて評価はされね。すばらくはそれぞれの大将さ従って動くのが賢明だ。
……慎重に道ば進むばって、泥濘がただでねとこがいっぺえで、そこで足がとられる。格好の狙撃場だ。高えとこ、目の届かねとこから……。火縄さ、弓ば引くための広さはねくてい。
そうしちゃあうちに、白い旗ば持った男、大家の白壁さ寄りかかってらのが目さ見えだ。兵らは競って男さ迫る。
すると数人の村人が屋根の上から現れ、ざるさ盛られた土ば投げた。急なことだったはんで顔っこにかかり、口さも入って慌ててまる。白え旗の男は遠けさ逃げてく。
……ここに隠えてら者が一人。大浦家の一兵卒で、八木橋と言う。まだ何か仕掛けちゃあかと踏んで、男が逃げてきそうな道の陰さ潜んじゃあ。
八木橋は白い旗ば奪い、大将の兼平さ差す出す。
……この家来は津軽一の知恵者にて、後に為信の代理とすて豊臣秀吉さ拝謁。見事に津軽の地ば安堵せすめたという。
種里城絵図
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2018/02/15 挿絵に関して
出典元:特集 津軽古城址
http://www.town.ajigasawa.lg.jp/mitsunobu/castle.html
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