密談 4/5
為信は考えた。……譜代の臣と他国者の違いに限らず、力っこある者ば見いだせれば、まんずいいんたことか。正直これまで目ば内側さやるのを疎かにしちゃあ。それは元々彼らが “婿殿” という蔑視により協力的でねかったはんでだ。
為信の力が認められちゃあ今、改めて家来の力量ば把握するいい機会かもすれね。
「来年は必ずでったらだ戦っこ起ごる。新すい戦いの仕方さもいぐすように、兵の訓練ばするべど思う。その時に譜代の家来さは、小笠原以上の活躍するごどば期待す。」
兼平は“いいんた考えがど存ずます” と相槌ばうつ。森岡も同意する。
「働ぎがいいんた者さは、それ相応の立場もけるし、格ば引ぎ上げるべど思う。」
中央では織田家が徹底すた能力主義ば敷いてらという。新すい戦の時代はきっと、能力が高く変化に対応できる者が勝つ。火縄ば入手できれば勝ちというわけでね。ねえならねえで、あるもんでどんき強くできるか、考えることのできる者が上さいるべきだ。
為信は続ける。
「なるべぐ実戦さ近え形で……雪が降る前にやりでえ。そんだな……一づの村ごど借え切って、演習ばやりでえ。」
戦はなんも平原ばすでやるわけでね。浜辺があれば、森林もある。なかでも民家ほどまねものはね。なんぼでも隠れることができ、民衆さ紛れることもできる。誤って民ば討ってまれば……その土地からの支持は得にけえ。
すかす……どこでやるか。兼平は即答こそすねばって、一つ案ばだす。
「野崎村はどうだべか。」
近くさ川と森があり、様々な訓練ができる。特にこの村の家々は寂れてまって、火攻めばすても新たに立て直せばい。民にすても、新すい家をければさぞ満足するべと。
「殿。では準備整い次第、皆さ伝えるべ。」
だばって為信は止めた。ある心積もりば持つ。




