密談 3/5
信直は為信さ恩義ば感じちゃあ。これまで通り忠誠ば尽くせば、見返りもでっけえはず。それは為信さもわかる。
兼平はわんつか肩ば落とす。
「ばって、どってこいだ……。この北奧の田舎で、火縄ば十丁も持づ男がいだなんて……。」
為信は一丁だけ持つ。それも運よく譲られたものだ。買うには……大金が必要だ。大浦家は他家と比べ銭ばわったど持つばって、火縄ほど手の遠いものはね。
それば信直は十丁だ。どった手段ば使ったんだか。
森岡は口調ばきつくする。
「……戦が変わるべな。」
危機感が漂う。兼平は言葉っこば加えた。
「もぢろん、九戸も必死になって火縄集めに走るびょん。津軽でも、他のてらんどが同ずごとば考えでらはず。」
ただす、湿気さ弱えという欠点がある。雪国でそればどう克服するかという問題は残る。果たすて気づいてらか。かつて家来の小笠原は冬の間、がぱっと松明ば焚いて火縄ば乾かすた。確かに有効だが……なんぼ金がかかることか。
為信は応えた。
「小笠原さ、火縄の入手にづいでまでえに聞いでおぐ。」
次に“さで、九戸の件ばどうすが……” と考えさ移るばって、ここぞとばすに森岡は為信さ詰め寄った。眉間さ皺が寄ってら。炎は揺れた。
「最近、殿は他国者ばす優遇なさる。もぢろん小笠原殿の力量は認めちゃあ。だばって……そう思わざるば得ね。」
兼平は首ば振り、だまって森岡ば見る。森岡は兼平に “仕方ねべし” と文句ばしゃべった。
為信は……確かにそう見えるかもすれねと思った。小笠原さ限らず、面松斎もすかり。……ただすそこさ、最初の頃の幻想はね。