毘沙門堂 4/5
夜、東から吹く風が寒い。晴政は馬さ跨り、歩いで従う兵らば束ねる。
城ば下ると、三戸の町がある。その真ん中ば丁度割くように馬淵川が流れる。兵らは堂々と民家ば横に通り、橋ば音立てながら渡った。民衆は何なんだばと布団ばはねのけ、小窓より軍勢ば覗く。誰もがこれから起こるんたまねことば予感すた。
町ば通り過ぎた。これより石段ば登り切ると、毘沙門堂。相手は小勢、まんず五十人。すかも武装すてねくて、不意打ちだびょん。
晴政は兵らさ一面に広がるように指示ば出す。兵らは丘ば囲むように位置につく。
……皆々、頂きば目指す。
……
晴政の軍勢は近づく。毘沙門堂の兵らは足音さ耳ば立てる。林の合間ば、白鶴の旗が見えてくる。
信直は、火縄さ弾と火薬ば込める。ほかの兵も同様にす、小窓より晴政がくるんた正面さ構える。
……一頭のでったらだ馬、男ば乗せて現れた。かつてより肥え太り、酒の臭いがこちらまで漂ってく。
男の後ろに、わったど兵らが付き従ってら。わんつか、もうわんつか……。
信直は、目で合図ば送った。
十丁もの激すい爆音、夜空さ響く。初めで聞く音さ、馬は前足ば高く上げた。大将は崩れ落ち、その場に土ばつく。周りの兵らが慌てて駆けてく。大将は、“なんもね” とでもしゃべったんだべか、兵は気ば取り直しこっちさ迫る。
すると、ふたたび爆音。毘沙門堂より放たれた。前さ進み出た兵は、無残に倒れてく。これが好機とばすに、槍や刀ば持つ味方は堂より出る。乱戦が始まった。
信直は堂より出でず、ひたすら大将の晴政の様子ばうかがう。馬さ跨るべとすも足ば引きずってらか、挫いたんだべ。
動けねえか。今こそ、天の代わりに罰ば与える。彼の銃口は、晴政ば向く。途中で目の前ば横切る敵や味方、一直線に当たる時ば狙う…………三、二、一……放つ。
その弾は、晴政の右のふとともば貫いた。




