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方言版 津軽藩以前  作者: かんから
屋裏の変 元亀一年(1570)秋
37/105

毘沙門堂 1/5

 晴政は何とか()すて()我が娘(めのこ)ば笑顔にさせるべど()わった(_/)と話っこば(/\)すた。かつての戦の功績や、侍女がまねく()して面白(おもへ)かったこと。信直()嫁いでく以前()思い出すながら、(とっちゃ)(めのこ)しゃ()べり()掛けた。


 娘は頷く(こまる)だけすて()、笑顔()()せね。最後に(とっちゃ)は、二々月前に生まれたばすの(/\)我が子(わらし)の話っこばすた(\/)。初めての男子(おのこ)たんげ(_/)嬉すかったこと……(めのこ)にとっては、惨さ(へずねさ)すか残んね()


 話のネタがねく()なった。いや……一つ残ってら(/\)

晴政は、あろうことか一番訊いではなんね(_/)こと()問うた。


 “わすと(/\)、信直。どぢらが好ぎが”


 翠はまずまずど(つら)()る。なんも(_/)ねかっ( ̄\)たその(つら)は、次第に憎すみ()露わにすた。


 (とっちゃ)()睨む。


 そすて、はっきりしゃべっ(/\)た。


 「信直様だ。」


 (めのこ)は袖で顔()覆い、その場から逃げ去った。襖は開いたまま。……晴政は、椀()残ってら()酒ば(/\)わん()つか()わん()つか()ずづ呑む。体はガタガタと揺るえ、(つら)(あけ)くなる。


 必死に抑えるべどす(\/)ばって(_/)そった(_/)理性が働く男だば()、これまでの所業()すべか(/\)


 (_)ったと(/\)怒鳴るべど()すた()。口()でっ(_)たら()と開けた。


 だばっ(/\)て、睡魔(ねぷけ)が晴政()襲う。そのまま前のめりに眠り込んだ。膳()載っちゃあ食い物は辺りさ落ち、無様な頽落()呈すた。


 翠は後ろに髪ば(/\)束ねる。侍女さ頼み、小刀でそれば(_/)切り落とす(/\)た。


 一瞬、その小刀で手首()切るべかと()思った。ほんの一瞬。


 (しれ)え布で体()覆い、赤子(おぼこ)()手で抱える。その足で、尼寺()登った。


 恨みの世界から遠ざかるべど()()ったが故だ。


 一方、糠部の地で流行り病は続く。

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