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方言版 津軽藩以前  作者: かんから
屋裏の変 元亀一年(1570)秋
36/105

妻との別れ 5/5

 「()り切れねがっ(/\)た。」


 信直は(かが)の翠姫()(ふけ)頭ば下げ(こまっ)た。(かが)すて()みれば、なんもわかん()


 「離縁すて()けえ()。」


 翠はかたまった。夫()なんとか頭()あげさせるべと(/\)伸ばしてあったその手は、宙()浮かんだ。


 “万民の為だ”


 なんぼ(_/)言葉でいく()しても、事実は変わんね(_/)。“()の何がいげ(_)ねがっ( ̄\)たのだが” と問い返すも、答えっこは(/\)さらに過酷(へずね)だった。


 “おめえ(_/)(とっちゃ)が、望んだごどだ”


 愕然とすた。


 誰よりも幸せ()願っ()てら()はずの(とっちゃ)……しゃべる(/\)はずね(\/)


 つぐらのゆりかごで、(おぼこ)がわめく。


 信直は、目()合わせね。誰もいね()横の方()向くだけ。翠は、わが子(わらし)()あや()さね()赤子(おぼこ)はひたすら泣く。


 その日のうちに、翠姫はわが子(わらし)共に(かでて)家来()連れられ、三戸()出発すた。このことにより兵は動かず、晴政も矛()収めた。


 信直は主君晴政の変わりよう()恨み、九戸の行い()恨んだ。


いつすか心の中()、鬼が生まれた。それはまだちっ(_)ちぇく(/\)未熟であったが、太い角ば生やし尖った爪ば持つ。


 (のれ)った。(かが)奪い(がめて)(わあ)()不幸にすた全ての者ば(/\)。いつすか流行り病が糠部の全体()(ふろ)がり始めた。それは無縁な領民()()っていくのだが……民は噂すあった。


 “信直の祟り”


 晴政は、(_)ったど(/\)酒ば(/\)呑むようになった。その口髭にはいくね( ̄\)匂いがこびりつき、会う(ふと)すべて()戸惑わせた。


 とある初秋の日。晴政は出戻り娘の翠()呼ばって、ともに(かでて)()呑むべと()すた()


 翠は、(なん)も信ずることができね(/\)。すでに夫は夫でなく、(とっちゃ)(とっちゃ)でね。感情()持たね(/\)のが一番と、無表情で晴政の酌()すた。


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