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方言版 津軽藩以前  作者: かんから
屋裏の変 元亀一年(1570)秋
34/105

妻との別れ 3/5

(ばんげ)さなり、風っこたんげ(_/)強く(きつく)なる。信直は外付けの廊下()歩き(あさぎ)、離れにある一室()向かった。そこさは(かが)の翠姫と(めのこ)の美が住まう。


 襖()開けると、翠姫は(おさね)わが子(おぼこ)()抱いで、ゆったりとあやすてら。(かが)は信直()気付くと、“そろそろ木戸も閉めて、備えね()()まいね()じゃ()” と、にこやかな表情でしゃべっ(/\)てく。


 信直は襖()すめる。翠は赤子(おぼこ)()つぐらのゆりかごに移すた。すやすやと眠っちゃあ。


 信直はその様()()で、わん()つか()安心すた。同ずくすて、心の中()何かが込み上げてくる。おもむろに傍()座す、次に(かが)の両肩()つかんだ。翠は不思議そうな(つら)()つめてく。


 「どうしたん(/\)べか()。」


 信直は肩から腰さ(/\)()移す、|かが(妻)()抱きすめだ。


 静かだばって、力(つえ)くしゃべっ(/\)た。


 「守るはんで()、絶対に守りぎる。」


 翠は何も(しら)ね。改めて主人の(つら)っこば()ると、どこか寂すそうだんた。


 ……すばらく、そのまま互いの体は動かね。翠は口()開いた。


 「……何かあったんだが。」


 信直は、ちっちぇ(_/)え声で返すた。


 「おめは(_/)、知らね(/\)んでい。」


 外では風のみならず、横なぶりの雨も加わった。台風は、南よりこちらへ迫ってく。いつも(むったど)のように、(ばんげ)のうちに抜けるかも知れね(/\)ばって。


 ……木戸()閉ずると、ガタガタと音っこ鳴る。そった(_/)中、二人は布団()揃って眠りについだ。信直の心は外とは違い、だいぶ落ち着き()取り戻せであった。


 朝。雨風は止む。木戸()開けると、庭先には割れた瓦がわった(_/)とあった。()した信直は、()ったと(/\)の簡素な青い直垂()身に着け、館より下()見回りに出た。


 田子の田畑は荒れ果て、木々の小枝がいたるところさ落ちてら()。屋根ごと潰されでら()()もあった。


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