妻との別れ 2/5
“いってえ、何なんだば”
信直は困惑すた。大殿は、娘ば返せとしゃべっちゃあ。……盲目すてら。後継をとられることば怖がって、ここまですとは……。
信直はしゃべる。
「……大殿も心ば落ぢ着がせば、いずれ撤回すべが……。」
「殿、ではどうすば。」
心は決まってら。“離縁するはずながろう” とそっぽば向く。第一、後継のことなれば九戸実親も離縁すねばなんねと、不公平だとも感ずた。
家来らはうろたえてら。“もす大殿のお考えが変わんねばどうすば” “お子はどうなるべか” とめどなく信直さ問いかけてくる。
信直は叫んだ。
「あーうっせえ。かっちゃくちゃね。」
わーだって、同ず心うちだ。わざわざしゃべらねえでもわかってら。……念のため、手ば打っておくか。
「泉山、頼めるが。」
家来の泉山は信直の元さ駆け寄る。
「お主さ頼むじゃ。今がら三戸さ向がえ。北信愛殿にこの件ばしゃべってけれ、大殿ば諫めでけれじゃ。」
「早急に致すます。」
泉山はでっけく頷き、小走りで部屋ば後にすた。信直はがぱっと息ば吸い、そすて吐いた。
残った家来らさ問うた。
「すて……裏さいるのは誰なんず……。」
“九戸殿だ” ”九戸すかね“ と口々さしゃべる。
九戸さ、恨みは募る。口車さ乗せられた大殿も問題だが、彼はあくまで己より早く去る人間。同ず時ば生きる九戸兄弟ば早えうちに何とかすておかねど、安心すて眠れね。
信直は気分ば変えるため、館の外さ出だ。風がわんつか強え。南から吹いてくる。