妻との別れ 1/5 +大浦城絵図
ここは三戸。南部家当主、南部晴政の本拠地だ。
夏の盛り、待望の男子が生まれた。幼名ば鶴千代という。晴政にとって初めてだし、唯一の男子であった。たんげ喜んでまって、までえに扱ったという。
……そった折、娘婿の田子信直は晴政と面会すた。跡継ぎより降りるんた。晴政とすては、止める理由ね。殊勝であると、彼ば褒めたたえた。ただす家臣の中さは、まんだ信直ば押す声っこがある。
一方で鶴千代ば生んだ側室の彩子は、何とすても自分の息子さ家督ば継がせてえ。後継ば確実なものとすべく、密かに一族の実力者である九戸政実さ頼んだ。
政実にとって渡りに船だった。このままでは信直晴政の死後に、後見人とすて勢力ばふるうことさなる。九戸一族は立つ瀬がね。せめて弟の実親さは晴政の娘婿とすて、でったらだ力ばふるってほすい。……鹿角合戦では信直さ後れば取ったばって、石川高信という重鎮が亡き今、逆転はあり得る。
……利用すね手はね。晴政公は、自分の息子の為に盲目だ。
あるとき政実は彩子ば連れでって、晴政と面会すた。
政実は、晴政さ詰め寄った。
「本当に、信直は引ぎ下がったどお思いだが。」
晴政は不思議そうにこちらば見る。
「真どしゃべっちゃあろ……自ら引ぎ下がるどしゃべったんでねが。」
「当人はそうしゃべっても、周りがそうはいがねえべ。」
政実は言葉ば強める。
「信直殿さ期待ばかけちゃあ者はわったといます。津軽の石川政信はんだな。重臣の北信愛殿もんだべ。あのお方は “一度決めたことば覆すなど……” としゃべってらとか。」
“ふむう……へば、どうせど”
政実は手ばつき、頭ば下げる。
「こごは、“娘婿” どいう地位ば召す上げるごどが上策ど心得ます。」
大浦城絵図
https://18782.mitemin.net/i290576/
2018/02/15 挿絵に関して
出典元:特集 津軽古城址
http://www.town.ajigasawa.lg.jp/mitsunobu/castle.html
鰺ヶ沢町教育委員会 教育課 中田様のご厚意に与りまして掲載が許されております。小説家になろうの運営様にも、本文以外でのURL明記の許可を得ております。
光信公の館
〒038-2725
青森県西津軽郡鰺ヶ沢町大字種里町字大柳90
http://www.town.ajigasawa.lg.jp/mitsunobu/
TEL 0173-79-2535
鰺ヶ沢町教育委員会 教育課
〒038-2792
青森県西津軽郡鰺ヶ沢町大字本町209-2
TEL 0173-72-2111(内線431・433)