初めての策謀 2/5
為信は口ばあけるべとすたばって、息っこ詰まる。激すくせき込む。おもわず面松斎はわんつかだけ笑ってまった。
「為信様……そんなに慌てることはございませぬ。面松斎はここにおります。」
面松斎は為信よりなんぼか歳っこがよけえだ。家中のはぐれ者である為信の……兄的な存在でもあった。
「まいねじゃ。……まんず、初めでだはんで。」
「そうでございましょう。……初めての “策謀” ですかな。」
為信はまんた慌て、せき込みすぎて、胸元辛え。面松斎にとっては、可愛く面白え。
「ええ。そうですね……鼎丸と保丸、二人とも殺せということですか。」
面松斎はにやりとすて、まんだ下ば向いてら為信さしゃべりかけた。為信はたんげ首ば振った。振りすぎんたにも見える。
確かに……実子の鼎丸と保丸ば殺ってまれば、家督ば譲る必要はね。必然と為信の地位は安定し、力っこ強くなる。
為信はだいぶ落ち着きば取り戻す、襟元ば正すた。
「私は家督がほすいんでね。認められてだげだ。力っこばづげで、新だなる施政ば行う。」
"ほう……何をしてほしいので"
「"偽一揆" ばおごすてけれ。」
"はて……初めて聞きますな。その言葉は"
「一揆のふりばすだげでい。他国者ば集らせ、領内で反旗ば翻す。兵ばもって征するどごろ、この為信が単身で乗り込み話しっこす。一揆勢は納得すて、おのおの家さ引ぎ上げる。どうだべか。」
早え口調でしゃべった。終まったせいが、わんつかすっきりなった表情ば見せちゅう。
……一ヶ月ほど前、相川西野の乱が鎮圧されたばり。支配者層は一揆の類さ敏感になってら。そこで手柄ば立てれば、為信の力ば認めるびょん。
「確かに私が呼びかければ、ここらの者らは一揆をおこすやも。しかし為信様。我らにとっての得はありますかな。」