最後の鷹狩り 3/5
平原は、新すき命さ湧く。新緑は勢いづき、冬眠から覚めた獣たちが駆け回る。野兎など小さな花ば見つけては片手で触れてみたり、花ば近づけて匂いば確かめでら。
為信ら含む津軽衆は、郡代の到着するのば待つ。大光寺や千徳など、名だたる武将が集結すちゃあ。その中でも唯一、為信だけが布さ包まれた長え棒ば持つ。隣の者は面白がり、“ほう、珍すいこと” などとしゃべりかけてく。
遠けより、石川高信公は籠さ乗せられてきた。その隣ば馬さ乗って次男の石川政信が付き従う。後ろさは、籠の簾ば半開ぎに外っこ見る女もいだ。老齢さ見えるはんで……高信の奥方か。女ば連れてくのは異例だ。
高信は籠から降ろされると、寄り添う奥方の肩さ寄りかかり、もう片方ば家来さ支えてもらう。顔っこわんつか膨れ、肌は黄色ががってあった。たんだ息は荒れてねくて、苦しい(へずね)素振りば見せね。
高信は問うた。
「信直は、まだなんだが。」
政信は辺りば見回す。上座にはもちろん、家来らの中さ紛れ込んでもいね。
「いねんた。」
高信は歯がゆそうだ。もともと領地が遠えはんで、わんつか遅れるとは聞いてらばって、そうとわかってあっても寂すそうでら。
その長えあご髭ば触る。次に手ば開いて、ずっと見つめた。何本もの毛っこ抜けて、汗が手の平についてらった。決すて外は暑くね。高信の体のどこかすこ、おかすくなっちゃあ。ずんぶと疲い。そえでも無理ば押すてきた。……これが、最後。
狩は始まった。
一番手は野原さ足ば置き、棒であたりば叩く。白え兎がどってんして、高く飛び跳ねる。遠けさ逃げるべとすばって、鷹は素早くその鋭い嘴で獲物ば捕まえる。
二番手は長え槍ば持ち、自分の力だけで獲るという。慎重に辺りば観察す、茶色い毛肌のイタチが見えた。そこばすかさず突き刺す。獣は悲鳴ば上げ、その場で倒れこむ。
次は三番手。鷹ば使ってでったらだ獲物ば捕まえるとちょっちゃべる。木々の生い茂る方さ近づき、なんかいねかと探る。……すると、でっけえ角ば持った鹿一匹。鷹は木々の間ば飛びぬけ、大物ば挑発する。鹿は角ばつつがれで、鷹の逃げる方さ向かう。すると森の出た先さ、武者は待っちゃあ。
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津軽弁MC たろっく
@tsugarujuku017




