鉄砲との出会い 5/5
小笠原は表情ば変えねで、一つ頷ただけだ。筒ば上さ向けで、持ち手ば変え、為信の方ば振り向いた。
「……雪国には、向きませぬ……。」
ほう、こった声だったな。久すく彼の声ば聴いた。……ばって雪国さ向かねとは、どったわけか。科尻はしゃべる。
「火縄は、湿気をたいそう嫌います。夏はいいでしょうが、冬はどうなることか。」
このあたりは、体が埋もれるほど積もる。そった欠点があるばって……、為信の決断は変わんね
「小笠原殿……火縄ばしかへでけねが。」
科尻ど鵠沼は、“いやいや殿にそのような恐れ多い……” ど、小笠原さ目ばやる。小笠原はだまって、首ばすんとも動がさね。
傍らで話っこば聞いだった面松斎は、為信のために口ば添えた。
「ますます、他国者は認められましょうな。」
科尻と鵠沼は口ばすかめ、考え込む。そうすてらうちに、小笠原は……
「……主命なれば……なんなりと。」
為信は喜ぶ。面松斎も、まるで弟のことかのように嬉すかった。対すて科尻と鵠沼は暗え顔っこ。この二人はいってえ、何ば企むんだか。
……為信は、気持ち晴れたままに城さ帰った。が、肝心なことば忘れてらのさ気付く。妻の戌姫だ。
次第に外は暗くなり、お日様はお山の向こうさ隠れるようとすてら。……為信は、密かに居間さ向かう。
……戌姫は、歳の離れた弟二人と鞠で遊んじゃあ。コチラさ気付いだばって……つれねぇ。
顔ば背けたまま、“おがえりなさいませ” としゃべる。為信は “うむ” とだけしゃべり、隣さ座った。為信は “鼎丸、保丸” と呼ばる。二人はここさ顔っこば向けるばって、わんつか怖がっちゃあか。
戌姫は、二人ば抱き寄せた。
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津軽弁MC たろっく
@tsugarujuku017