鉄砲との出会い 2/5
ひらりと一枚の紙、為信の元さ飛んでった。自然と目がいく。
……そこさ、筒状の何物かが描かれちゃあ。
「これはなんなんず。」
為信は問う。眉間さ皺ばよせて、いまだ理解すていね様子だんた。
科尻は渋々ながら答える。
「……火縄でございます。」
火縄だが。聞いたことある。なんでも中央では戦さ取り入れてらと聞く。
そのとき、後ろから鵠沼がやってきた。
科尻は “こちらは殿よ” と耳打ちばす、科尻と同ずくかすこまった。為信はあばら屋の中さ通され、談義っこ始まる。
為信はしゃべる。
「ながながの……火縄は高えとこで、こった田舎さは手に入らね。ばってろ、こごさその図面がある。何しちゃあんだな。」
科尻と鵠沼は顔ば見合わせる。なんぼかまねくなってらような。
「いえ……後学の為でございます。将来、殿のお役に立てるよう、知識だけでもと入れていたのです。」
それはあっぱれなこと。
……為信は、まずまずと図面ば見る。
“……いまいぢわがんね。実際に手に取ってみてえのお”
ここで鵠沼は恐る恐る為信さ訊ねる。
「為信様……なんのご用件で参られました。」
「うむ。小笠原殿さ、面松斎殿ど会えるように席ば設げでほすいど願うづもりだったばって。」
科尻は答える。
「確か……面松斎は鯵ヶ沢に移ったはず。」
彼の占いが評判となり、大家主から店ば出させてもらったという。