鉄砲との出会い 1/5
田子信直は、南部家の跡取りさなった。九戸実親の働きは一歩及ばず、わったと悔しがる。信直は為信ば信頼す、たんげ褒めたたえた。ただすこれは二人だけの話。本当は為信が首ば打ち取ったのだとバレてはまね。“いづの日が恩ば返す” と約束するすかできねかった。
ただす、為信の家来である兼平と森岡は知ってら。その様ば遠けから見でまったとこで。……こうなれば、森岡も認めざるば得ね。いつすか大浦の家中さ知れてまり、秘話とすて心さ留め置かれた。
小笠原は見事に手柄ば立てたはんで、大浦家さ正式に仕えることさなった。これまでのあばら屋ではねく、もうすこす造りのぴっとすた屋敷ばけるべとすたばって、小笠原は断る。これまでの屋敷の方が身の丈さ合ってらんた。謙遜なのか、放浪のうちに身につけてまった貧乏性か。
大浦城さ軍は引き返す。為信の気は久々に緩んだ。やっとで我の意思が家来さ伝わるようになってきたことに、手ごたえば感ず始めてら。わんつか気晴れやかだ。
”……面松斎はなにすてらだか。まんだ、占いの真似っこでもすてらかな”
昔は愚痴ば聞かせたもんだばって。今も続く悩みは……頭によぎるのは妻の事。決すて仲睦まずくはねえ。どう接すればいかわからね。……面松斎だば、何としゃべるべ。
”……ばって、高山稲荷さも行き辛え。万次ど鉢合わせでみろ、不測の事態ば生みかねん”
”理右衛門殿さ頼むが……そう何度もな……ああ、小笠原だばどうだ。同ず他国者だとこで”
秋の頃合いだ。為信は小笠原の住まうあばら屋さ出向いた。真昼ぐらいだったべか、彼は戸ば叩いた。戸はわんつかだけ開き、小笠原とは違え顔っこ見えた。科尻は訝すそうに “どちらさまでしょう” と訊いだ。為信はもちろん、“大浦為信だ” と答える。当然、科尻は仰天すた。
「すいません。いまだ殿と会ったことなく、顔を存じ上げませぬ。」
慌てて、机さがじゃめてあった紙ばすまい出すた。