南部の跡継ぎ 5/5
信直と為信は、城の中さ入った。激すく攻め立てられ、落城も目さ見る。だばって手放すがたきに変わりねく、敵は緩むことねく必死に抗う。その中で信直自ら城主の首ばとり、南部の後継さ名乗りばあげること。至上命題だ。……配下より、報告に来る。
“九戸勢、南より城内さ侵入。わったと攻め立ででら”
予想通り。こちらは一歩早く進んじゃあか。すでにここは城の中心。
迫って来る敵兵ば幾重にも切り倒す、信直と為信は進む。……すると、向こう側より女子の叫び声が聞けた。……奥方と子供だか、兵士さ連れられて逃げるとこだ。鮮やかな羽織ば身に付けてらばって、たんげ乱れきっちゃあ。
信直は大声で叫ぶ。
「我は南部一門、田子信直だ。弱え女や子供まで手ば出す気はね。安心なされよ。」
敵兵はここさ気付く。ある者は刃ば向けて警戒す、ある者は奥方と顔ば見合わせる。戸惑ってらんた。
二人は相手の出方ばうかがってらと、彼らのさらに奥の襖より、立派な鎧兜ば身に着けた武将が現れた。そすて怒鳴りこむ。
「我ごそは安東家臣長牛城主、大高忠成だ。情けはいらね、神妙に勝負。」
信直と敵将、互いにゆっくりと近づく。その間に奥方と子供は兵士さ連れられ遠けさ逃げでった。憂いはねといった心地だべか、敵将は金属音が鳴るくれえ強く、信直の刀と組み合った。
……信直は次第に後ろさ下がってく。為信はよってくる敵兵ば倒す。
“わっ” と信直の声が聞こえた。為信が振り向くと、信直は背中から倒れており、敵将と組み合ったまま踏ん張ってら。
“まね”
為信は、卑怯にも横から刀ば刺すた。……一対一と決め込んじゃあ敵将も悪いかもすれねばって、為信もはずめ手出すばする気はねかった。ただただ、信直ば守るためだ。
信直は息っこ荒げて、その様ば見るだけ。為信はなんとか冷静さば保ち、落ち着いて敵将の首ばとった。
為信は……首ば信直さ差す出すた。……一瞬で理解すた信直はこまる。
そすて大声で叫んだのだ。
「田子信直、城主の大高忠成ば打ぢ取った。」




