南部の跡継ぎ 4/5
家来衆とは違い、兵らは為信のしゃべる事ばよく聞く。きっと偽一揆のことあったはんで。戦が長引くとこさ、話す合いにかってあっちゅう間に解決すてまる。その手腕は、寒さと共に身さ染みてら。
為信の後ろさ、兼平や森岡も続く。信直の兵は大浦兵の後ろさ位置する。まるで大浦が信直ば守るかのようだ。
太陽がまんだ高えころに出陣すたため、日っこ暮れる前に目的地さ到着。長牛城の東側、ブナ生い茂る山さ身ばひそめた。ひたすら暗くなるんば待つ。
……日っこ暮れる。梟は鳴く。花輪と高倉山の両軍は城ば目指す。九戸は伏兵ば走らせた。
北と東から兵が城さ攻めよせる。対する長牛の敵兵は丘の草むらに兵ば潜めであったらすく、その中で戦いが始まった。
その様子ば山から見定める。
信直は、小鞭ば振り下げた。
為信らは、鬨の声ばあげねえで、静かに進んだ。……城からは明かりっこが漏れて見える。松明ば焚いてら横では、敵兵らが外ば警戒すてら。……ただす、数はわんつかだ。丘さ兵士が割かれてらはんで。
攻め込む。
ほら貝ば吹き、門さ向かって兵は駆ける。敵は弓ば手さ取り、矢ば射る。空気の震える音っこは、近くに眠る鳥らば一斉に羽ばたかせた。
……丸太ば持った兵らが門さ体当たりばする。扉はいともあっけねく打ち破られた。邪魔する兵士は次々に倒されてく。
櫓からは名のある将だべか。指揮棒ば片手に下の兵らさ指示ばだ|すてら。“逃げるな進め” “敵はすぐそこぞ”
次第に居ても立っても居れねくなって、将は櫓から梯子で降りてきた。太刀ば抜き、敵さ向かってく。
そこへ小笠原は勝負ば挑む。名の知らぬ将は、“うるせえ” と彼の槍ば手に取り、横さ押すのける。小笠原は一旦下がり、まんた突く。
敵は心ば決め、対決することば選んだ。彼の太い胴体ばめがけ、突進する。太めの体ながら小笠原はそれば軽くかわす、今度は槍ば短めに持って、まんだこちらば見た敵さ挑む。
……槍先は、名の知らぬ将の腹ば貫く。
脇差すば手さ取り、首ばとる。手ば伸ばす。高々に掲げた。普段は無表情だばって、この時ばかりは明るい。
皆、小笠原の手柄ば認めた。