初めての策謀 1/5
夜遅く、闇っこ深え。西から海風が荒れ野さ吹付ける。そった場所だばって、賑わってら一角がある。
……ここは津軽、高山稲荷。
祈祷師や的屋が集って、市場さ負けねんた人ば呼びよせてら。はぐれ者もわったといて、必然と“他国者”の寄り添う場さなった。
特にここは港町の鯵ヶ沢さも近く、他の神社仏閣より人っこ集まる。鳥居の数は京の伏見稲荷にも負けね。屋台の後ろ側さ小っけな石の祠ががっぱどあり、それら一つ一つに決すて報われね人々の思いが詰まってら。
とある小屋で、為信はこそらっと他国者としゃべる。ござさ胡坐ばかく。髭ばきれいに剃っちゃあその顔っこは、若いものだんた様ば際立たせでら。
すかも、まんだ二十歳さもなってねえ。あたりめだばって、何かばなすえたこともね。でったらだ自信もね。
「面松斎殿……こんたびは、不幸だったの。」
対座するのは面松斎、他国者だ。
「いえいえ……我らに気をかけていただいているだけで十分でございます。」
出身は上州沼田だと。こっちさたどり着いてからは、占いの真似っこばすて暮らすちゅう。
「すて……面松斎。」
わんつかおどおどすいこと。
「なんぼかしゃべってらはんで、おべでらべ……。家中でのわの立場ば。」
為信は認められてね。義父が死んで家督ば継いだばって、あくまで期限付き。十年もせば、義父の息子さ譲ねばまいね。婿養子ってのは肩身の狭えきゃの。
そったこともあって、実権は家来衆握ってら。自分は単なるお飾りだ。
面松斎はしゃべった。
「ええ。存じております。在来の民、他国者を分け隔てなく接してくださる殿でございます。何なりと相談にお乗りしますよ。」
為信、最初の戦。それは面松斎ば説得すること。
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