南部の跡継ぎ 2/5
信直らは花輪の陣中さ戻った。為信ら諸将は石川兄弟の周りに集る。席さ座ることねくその場で信直ば囲み、立ち話ば始めた。
石川家筆頭家臣の大光寺は、顔っこばすかめる。
「……大変なごどさなったんた。」
信直は言葉ば返す。
「これで決着ばづげでまるどは……豪快な大殿らすい。」
ひやりとすた汗、信直の頬ば伝う。弟の政信はしゃべった。
「だばってろ……父上はわがってるんだべか。」
信直は口ばとがらかす。
「うむ……。」
“もしかして、父上は邪魔なんだが”
“……確がに、父上のいる前ではあったごどばしゃべれね”
“……どうすべ”
皆、悩みこむ。そった中、大光寺はある提案ばすた。
「夜駆げだべかな。」
“九戸さ手柄ばどられる前に、城を落とすすかね”
“その実、あちらも同じんだごどば考えでらやも”
考えてると突然、信直は閃ぐ。話す合いの輪ば抜げ、陣中の上座さ腰ば下ろすた。そすて周りに叫ぶ。
「おい、地図ば持ってごいへ。」
政信は家来からでったらだ布さ描かれてら地図ば渡されると、それを持って信直の隣さ駆げ寄った。手前の机さ布ば広げる。諸将は信直の周りに集まって、立ったまま地図ば眺める。
「……北や東がら攻め入るんだば、この丘がまねびょん。」
信直は指さす。その丘の草むらば避けてみでも、小川が城ば囲んでら。さらには乗り越えたところで、城へと駆け上がる目前の土堀。矢じりが私達へ向く。敵にとってたんげ守りやすいびょん。