他国者とは 4/5
小笠原は新すく為信の家来さなった。だばって他国者だとこで、家来らの反発はのっつどある。“どごぞの骨さ、禄ばける気が” “為信は何かんがえちゃんだな”
特に、森岡は為信に詰め寄ってきた。
「こったかちゃくちゃねくして……殿はこれまでの殿らすく、黙って御座にいればいのだ。」
為信はしゃべり返す。
「飾り物だばって、“殿”は“殿”だ。決すて曲げん。」
無理やり押す通すべとす。これは重大な約束事なのだ。対すて森岡は怒鳴る。
「やっていごどど、まねごどがあるべな。」
二人は顔と顔ば近づける。一触即発とはこのことか。
あわてて、家来の兼平が止めに入る。二人ば引き離し、落ち着かせようとする。
実は、この兼平という男。先の陣中さは参加すてね。留守役とすて大浦城ば守ってら。だばって為信の活躍ば見てね。
ただす他の家来や兵士がら伝え聞きくことより、“本当は力っこあるのでは” 思い始めてらった。力があるんだばお飾りの婿といえど、大浦家の為に才覚ば発揮すてほすい。そう考えた。
兼平はしゃべる。
「だば、こうすべ。」
二人は兼平ば見る。
「もす、次の戦で小笠原殿手柄ば立でれば、そのまま家来どすてつかう。為信様の目にも狂いがねがった。」
手柄がねかったら……
「小笠原殿は大浦家がら出でけれ。」
その時は、為信の立場は以前のように戻る。
森岡は渋々承知すた。為信もそれば受け入れた。……ここは小笠原を信ずるすかね。あの万次の選んだ男だ。期待すてらった面松斎は来ず、つまる所それ以上の活躍ばするということ。
……その小笠原はというど、言葉ば滅多にしゃべらず、ただひたすら槍の腕ば磨いでら。