他国者とは 3/5
理右衛門は答えた。
「“敵ば作んねごど” だべかな……」
彼は、持ってら湯呑ば茶托さ戻すた。
「……商売は、相手さ嫌われるどやっていげね。私の仕事は、交易にかってもだらされる様々な商品ば、多ぐの方々さ売るごどだ。肝心要は……こぢらが一歩引いで……実ば取るのだ。」
”……町ば荒らされるのは一大事。お客様が飢えでまるのも一大事。幸いにも、万次殿は分ばわぎまえでおられます。……決すて取りすぎるごどばすね。私ばまねくせば、元も子もねえ”
理右衛門はそうしゃべると、ニコリとほほ笑んだ。為信は腕組みばすたまま。だまって一づ、頷く。
「それに……これはあぐまで私情だばって。」
ん。為信は頭ばあげる。
「万次殿のあらんどさは、わったど他国者がおります。しげねく歩いでぎだのもあり、船さ乗ってくる人もあり……。」
“奴隷もいるとこで”
為信は一気に目ば開いた。それは真かと問う。
「はい。こごらの者の中の、常識だはんで。」
驚いちゃあ為信ばしり目に、理右衛門は飲み干すてら碗さ茶ば注ぎ足すた。平穏そのものだ。
奴隷は……戦争で生まれる。どこかの国がどこかの国さ攻め入り、捕虜さす。彼らば人の足りね国さ売り、じぇんこさ替える。ほかには貧民がわらしば売って、生計ば立てる場合もある。
「……その奴隷ば買い取って、自由の身さしてらのが万次殿よ。」
奴隷だった者たちは感謝す、残りの人生ば万次のためさ捧げると誓うという。それが “万次党” の強さだ。
為信はいっそうおもやむ。はだすて万次はいい人なのが、まね人なのが。……型さ決すてはまんね。
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