岩木山、雪の陣 5/5
伝令は、大声で叫ぶ。
”石川様、三千の兵ば率いでご着陣”
為信も慌ててまり、眠気など覚めてまった。家来衆総出で迎える。
石川高信公……老齢ではあるが、まんだ衰えば見せず。長えあご髭ば蓄え、古代中国の関羽を思わせる。
陣中さ彼は家来ば引き連れて入る。為信は上座ば差す出す、下さ頭っこさげる。高信は“んだか” と相槌し、席さ座る。周りの者らに眼ば光らせた。
高信はたんげ低けえ声っこで問う。
「戦況は。」
森岡が答える。
「はい。ついさきた和っこ成り、一揆勢は今夜中に引ぎ上げます。」
“おおっ” と高信の引き連れできた者らは驚きの声ばあげた。だばって、高信はしゃべった。
「こんだけで済むかして。」
“……一度、反旗ば翻すた者は二度三度どやるものだ。そうだば、今をもって平らげるのがいのでねが”
為信は呆然とすた。……いや、ばふらっとすてはいられね。口ば開くとすばって、森岡はだまって首ば振る。だばって高信は為信さ気付く。
「何があんだが。しゃべりへ。」
鼓動は激すさば増す。”……いやまで、こんばやくなんな。なんな、なんなよ……”
「……信なぐば立だず。……私は民ど約束すたのだ。こごで不意打ぢばがげれば、私たちの信用ばねくす、引いでは南部の今後さ響ぎがねね。……どうかご容赦を。」
”……よす、落ぢ着いでしゃべれた”
高信は彼ば凝視する。その鷹のような鋭い目、為信は抗うことのできねネズミ一匹。
「……私も考えでらぞ。相川西野の乱が平定されだばり、そすて今度の事。聖域どで、徹底的にやるべぎがど思ったがな。珍すい奴。」
“私に意見するんたは……。んだ、大浦の領内での事だ。引ぎ上げるべ”
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