天地否 5/5
沼田は訝すむ。
「ええ……それは、次の計略が成功するかどうかでございましょうか。」
為信は首ば振る。身ば乗り出す、耳元でしゃべった。
「……私が、地獄さ落ぢるが否が。」
“いや……のような占いは初めてです”
“だべな”
沼田はその場から退き自室さ戻る。すばらく蓋がされてら、埃っこかぶる八卦の道具。あけ放つと、古めかすい匂いが辺りさ広がる。
占いっこ始まる。筮竹ば持ち……為信は竹のこすれちゅう音ば聞く。
…………
本掛、天地否。
本来の意味で思えば “停滞” ば意味す、”あせらずゆったどやるべ” と声ばかけるんだばって。
この場合だば……天さ昇ることねく、地獄さ入ることもできね、ただ世間ば漂う幽霊。
為信は、がっぱど笑った。腹がはち切れるんたくれえに。
「世さ未練だらだらで、彷徨い続げるんだべ。」
沼田は “もしや” と感ずた。為信ばなんとか落ち着かせる。
「これにはもう一つ、考え方がございます。」
“地蔵菩薩こそ、そうです。天や地獄でもない。人間界に在り、衆生をお救いなさる……”
“では、私きゃ神仏さ化すと”
“はい。魂は常世に残り、津軽を守り続けるのです”
そったごどあるはずねえべと、為信はあざげだ。




