天地否 4/5
家来ら、わけわかんねでら。それは黒え筆の跡がたんげ散りばめらってろ、雨っこ横なぶりに降っちゅうようにも見える。ただすこれと地獄、どう関わるんだか。
和尚は肩の間から分け入り、ずっくりとそれば見つめる。そこさ人間や鬼といった形でねく、ただただ同ず模様が続くだけ。
“……涙っこだんた”
為信は頷いた。
“こったに、優すい世界はねえべさ”
己は死んだっきゃ地獄行き。そう為信は思ってら。たんげ人ば殺め、誑かすた。これからもそうだびょん。本心とは違えと分けてらばって……最近では同ず人格だと思えてくる。二つの何かがまずりあい、一つさなった。
和尚はしゃべった。
“神仏ば頼りへえ”
為信は首ば振る。
“これが、己の定めだ”
いまさら、曲げるわけさいかね。
……その夜、為信は沼田と集う。ふと、昔の名で呼ばる。
“面松斎”
沼田は “懐かしい響きですな” とわんつか笑う。
「して、次にどのような手を打ちますか。」
急に現実さ戻されてまった。為信は答える。
「田舎館の千徳分家ば討ぢ、浪岡も併合る。」
沼田は腕組みばすて、唸りながら悩やむ。
「田舎館はいいとして浪岡となりますと……安東をどうなさいます。」
安東氏と浪岡北畠氏さは婚姻関係がある。浪岡ば攻めるんだばすなわち、安東との手切れば意味する。為信も考え込んだばって……今夜は深く想うことが難すい。手|ば大きくたたき、沼田さとあるお願いばすた。
”一づ、昔の様に占ってけねか”