現状確認
ふぅ、疲れた。
男の説明が終わり、案内された部屋に押し込まれるような形で異世界初日を無事に終えることができたのだが、軽く男の説明から分かったことを少し思い返してみようと思う。
まず、男の名前はルノ・ローラン。ちなみに、三人の長男らしい。説明を聞いている時に感じた印象は、変人。
その根拠は説明中何度か噛んでしまった時、妹の罵詈雑言に対し、顔を火照らせもじもじしていたから。あまり仲良くなりたいとは思えない。
特技は縛ることだそうです。ローランの特技を聞いた時俺は確信した。こいつヤバイ。
俺を現行犯で捕まえた彼女は白い絹のような美しさを感じる髪を持った美少女、そしてさらっと伸びる足を見るとローランの性癖も悪くないと思ってしまった。彼女は名前をユキというらしい。よろしくとだけ紙に書いて置いてあった。犯罪者とは話もしたく無いということだろうか…かなしい。
ちなみにリズの妹。
1番俺に元気に話しかけてくれる赤い髪の美少女がリズである。リズはちっちゃいが、男子が1番目に入ってしまう部分だけ大きい。
異世界不思議。
と、これからお世話になって行く住人を改めて頭の中で考えていると思い出した。
俺能力使えるじゃん。
不思議ポケットがちゃんと使えるならその能力で逃げることもできたはず…
まぁ、可愛い子と一緒に暮らせるからいいやと軽い気持ちで考えていたことに後悔するのは随分後のことだった。
*****
よし!俺ができることの確認をしよう!
俺は今用意された三畳くらいの部屋の真ん中で恐る恐る自分のポケットに手を突っ込んだ。
ゔえっ、
ポケットに手を突っ込んだ時、自分の喉から手を突っ込んだような感覚の中、手に紙のようなものが触れた。
必死で引っ張り出す。
がはっうぇっ
荒い呼吸の中なんとかぽけの中から紙を1枚取り出せた。
その紙にはコンピューターで書いたような、まるで人情味のない文字で書いてあった。
しかし、その内容はよくわからないことばかり書いてあった。
地球の名前:夏目蒼へ
おめでとう。
君が人族に生まれていたなら16歳くらいかな?
もし、稀に人族に生まれていなかったのなら幾らか誤差があるかもしれないのじゃ。
まさか願った道具も無しとは思ってなかったじゃろ?
そのポケットは身長170センチになった瞬間に現れるように設定したのじゃ。…………別に体の表面積が小さいとポケットがつけられないとか、ポケットを小さくできなかったとかじゃない!
でも良かったの、身長・伸・び・て
絶対怒っとるじゃろ?
これが神を怒らせた怖さじゃ!
恐れ慄け!
悔しかったらここまで来るんじゃな。
どーせこれんけどー!
ちなみにそれ欠陥品じゃからの〜
神よりww
うん。はっきり言って謎すぎる。まず、なんで転生先の名前も夏目蒼なのに、わざわざ地球の名前と入れたのか。
他にも色々言いたいことがあるが、1番変に思ったのが転生先でポケットはすぐについていた、しかし、これには道具無しと書いてある…なぜだ?
それに、この文章がポンコツ感丸出しである。
まぁ、それはいい、
でも欠陥品ってなんだ?
と、その時手紙の裏から一枚の紙が落ちてきた。
不思議ポケット(欠)
能力:某アニメの青いタヌキのポケットの中身を取り出せる。
取り出せるアイテムはランダム。
注意:取り出すと気持ち悪くなる。
ため息を1つ。
もう(欠)って書いてあるじゃん。
てか、だから手紙取り出した時気持ち悪かったのか…
神さまの嫌がらせのことを気にしてるとさらに腹が痛くなるからもうやめよう。
てか、実際はあんまり悔しくはない。
なんか手紙から察するに神さまも計算違いがあったんだと思う。
たぶん、俺を悔しがられるような計画があったけど、それが潰れたのにも気付かずに恐れ慄け!悔しかったらここまで来てみろとか言ってる辺り凄く神さまがアホっぽく思えて来た。
スカッと気分である。