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無理ゲーオンライン  作者: IDEI
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37 初めてのダンジョン

 茂みの中に入り、軽い眩暈を耐えて歩くと、そこは美しい草原だった。


 後ろを振り返っても、広々とした草原。


 え? 今、俺たち何処から入ってきた?


 心配になって、今来た場所に戻ると、そこは茂みの多い、森の一角だった。


 うん。今入って来た場所だ。


 サヨたちも出入りして確かめている。


 「これは難しいな。遠出した場合、この場所に帰ってくる自身が持てないぞ」


 この出口の場所にも、中の入り口の方にも、転移の魔道具を置き難い。誰も居なくなった時に魔獣が悪戯する可能性を潰せない。たとえ、縄張りで近寄りがたい状況であってもね。


 「さっき転移の魔道具を置いた、魔獣のエリアの外なら少しは安心だけど、それでも長期間は不安しかない」


 「とりあえず、今回はこのまま潜って、出る時はゲートの場所にするしかないのかもな」


 「安全性ではそんな感じだよねぇ」


 一応の結論は出たので、今回はこのままダンジョンに潜ることにした。


 そして再び草原に出る。


 「さて、どちらの方向に進もうか」


 周りは三百六十度のパノラマ風景のごとく、どちらを向いても草原。この草原のどこかに、次の階層へと繋がる階段とか、転移ゲートとかがあるのだろうか。


 「天。さっきダンジョンの入り口を見つけたように、次の階層への場所って判ったりしない?」


 「あれは、本当になんとなく、だったのだが。とりあえず、この方向が気にはなるな」


 「じゃ、そっちへ行ってみよう」


 「おい。我も確かでは無いぞ?」


 「他に指針もないから、目をつぶって方向を決める、とかと同じだよ。気にしない、気にしない」


 一応、念のためにと、森から引っこ抜いてきた枝を、ダンジョンの入り口らしき場所の周辺に突き刺して立てる。無くなっている可能性も高いけど、もしもの目印にはなるかもしれない、という儚い希望で。


 そして草原を進む。一見するとのんびりとした風景だけど、ここってダンジョンなんだよね。新しい出会いを期待できるかな?


 ギャン! ギャン! ギャン! という鳴き声が遠くから聞こえてきた。


 ああ、新しい出会いだ。


 始めてみる魔獣。一応犬らしいが、妙に体が短い感じがする。犬の足が短いんじゃ無くて、胴が縦に短い。胴長短足と完全に逆バージョンだ。そのため全体のシルエットに違和感とアンバランスさを感じる。


 現れたのは犬型が五頭。前方に三頭、後ろに二頭だ。集団での狩りに慣れてるね。


 そして、その犬たちが後ろ足で立ち上がった。


 なんと前足の形態も普通の犬とは異なり、人と言うよりは小型のサルのような腕を持っている。

 全体として中型犬ほどの大きさなんだけど、後ろ足で立ち小さな手をワキワキさせているのは異様な不気味さがある。なんか、殺傷能力を絶大に持つサルに取り囲まれている雰囲気だ。


 ああ、サルと見ればいいのか。


 「さしずめ、犬猿って所かな」


 「え? 僕はコボルトとかと思いましたけど」


 「もともとのコボルトって妖精の一種で、ノームとか家妖精とかに近い存在らしいよ。犬頭の悪魔っぽいのはRPGの影響らしいね」


 「へー。そんなこと気にもしていませんでした。言われてみれば、ゲーム用に作られた魔物ってけっこう多いですしね」


 「その代表格はスライムだろうね」


 と、そこで戦闘開始。


 襲い掛かってきた犬猿をトーイが迎撃し蹴り飛ばす。さらに別方向から来た犬猿をサヨが真正面から切り伏せる。なんと頭部を真正面から真っ二つ。体全体を縦に真っ二つにする日も近いかも知れない。


 ロッカクも金属製の魔法の杖と言う名の鈍器を振り回して犬猿を弾き飛ばしている。


 俺も、上から下方向へとなるように角度をつけることを意識しつつ、目の前の犬猿に向かって引き金を引く。


 まぁ、一人一頭、サヨだけ二頭という、あっという間に終わる戦闘だったけどね。


 そして、戦闘が終わってから少しだけ待つ。すると、倒した魔物がスゥッと消え、あとに握りこぶしに収まる程度の石が残った。


 「これがドロップかぁ」


 「なんか、ゲームっぽいですね」


 「このダンジョンから溢れた魔獣の末裔が外の魔獣だとしたら、一応は生身という事でいいとは思うんだけどね」


 残った石を拾うと、どうやら魔石らしいことは判った。


 「天、地竜、どう見る?」


 「うむ。かなり質が高いと思えるな。しかもあの程度の魔獣から出る魔石にしては大きな方だろう」

 「うん。でも、さっきの犬猿? だっけ? あれって、種族魔法を使っていなかったよね」


 「外の魔獣はほとんどが強化系ばかりだったっけ? だとすると、このダンジョンの魔獣も魔法は苦手なのかな」


 「基本的に魔石は魔法を使うと育っていくから、苦手だとか、使っていないとかは無いはずなんだよねぇ。

 人間は意図して目的に合わせて使う、という方法をとっているから魔石は育ち難いんだけど、魔獣は生きるために魔法を使い続けないとならないから魔石が大きく育つんだよ」


 「あ、そういう原理かぁ。だとしたら、なおの事、ここのダンジョンの魔獣は異常と言う事かな」


 「全てがあの犬猿と同じとは限らないけどね」


 とにかく、数で調査するしかないと、次の獲物を求めた。


 まぁ、次も犬猿だったのは御愛嬌で。


 犬猿だったら、細かく観察する必要はもう無いと言う事で、エンカウントした瞬間に惨殺現場になる。

 犯人は、この中にいる! かも知れない。ダンジョンだから迷宮入りは仕方が無い。


 数回犬猿とのエンカウントを越えた俺たちの前に、今度は猫型の猿と言うような魔獣が七頭現れた。


 「今度はさしずめ、猫猿かな」


 「後ろ足で立って、手が使えるみたいですから、僕はケットシーかと思いました」


 「ケットシーって猫の王様で、一頭だけの存在らしいけどねぇ」


 「えぇ? また新たな情報が!」


 「猫系は、本来なら集団での狩りはしないはず何だけど、七頭いるねぇ。基本はお尻や太ももに噛り付いて、移動力を奪ってから止めをさすという狩りの仕方だと思うけど、集団だとそんなの関係なさそうだね。一応、爪も鋭いから気をつけてね」


 という所で戦闘開始。


 なんか、出会ってから戦闘開始までに説明できる時間があるのが不思議だ。


 ああ、これが、伝説の『説明しよう!』というスキルの賜物かぁ。


 で、犬が猫になっただけでした。


 出てきたドロップも似たような大きさの魔石のみ。


 「素早いとかはわかるんだけど、普通の素早さだよねぇ」


 「種族魔法とかが加わったら、どんな戦い方をしてくるんでしょうかね」


 「基本は強化系と攻撃系? 土魔法で串を作って投げてきたり、炎を纏ったり、燃やしたりとかね。雷、水、風とか。眠らせるとかもあったなぁ。妨害系は遭遇したことが無いかも」


 「妨害系ですか?」


 「草とか使って相手を縛り上げるとかね」


 「なるほど。いるかどうか判りませんけど、植物系の魔物だと、ありそうですね」


 そのロッカクのセリフで気になったので、ベアーズに聞いて見る事にした。


 「植物系っているの?」


 「いるぞ。ただ、ネズミの様なモノを捕らえ、時間をかけて殺し、時間をかけて腐らせるだけらしいがな」


 「さすがに植物系は気が長いのか」


 そんな事を話していたら、どこかでフラグが立ったようだ。目の前にネズミ系の魔獣が現れた。


 「ネズミだー! 殲滅開始ー!」


 詳しく見る間もなく、ノリで叫んだら全員が一気に飛び出した。まぁ、ここら辺の魔獣ならそれでも大丈夫だろう。


 「ネズミは夢の国に帰れー! ひーはー!」


 とか叫びながら小銃を乱射。なぜかスッキリしたよ。なんでだろうね。


 で、ドロップは似たような魔石。魔石集めは捗るんだけど、なにか納得出来無い感じがする。


 それから、ホンの少し歩いた所で、いきなり大きな熊に遭遇。


 「なんか、いきなり過ぎない?」


 それを言うだけで精一杯。熊は後ろ足で立ち上がり、片腕を持ち上げながら迫ってきた。


 大きく散開してやり過ごす。


 そこで漸く対称を観察する余裕が出来た。


 熊は一頭のみ。後ろ足で立った高さは二メートル半ぐらい。でかいけど、特に特徴も無い普通の大熊らしい。


 「まず、普通の戦い方で様子を見よう。戦闘開始!」


 正体不明、特殊能力不明の敵に対しては、打撃のトーイ、斬撃のサヨ、銃撃の俺、という順番で攻めるのが理想だ。

 理想だ。

 そう、夢なんだよ。


 戦闘開始と言った途端にサヨとトーイが左右から同時に攻撃し、どちらかを迎撃するか迷った熊に攻撃を入れて倒してしまった。


 ああ、人の夢と書いて儚いと言う気持ちがコレなんだろうなぁ。


 「なんか、普通の熊、だった?」


 「そんな感じですね」

 「あまりぃ、手ごたえがあったとは言えませんねぇ」


 ここで熊の方に哀れみを感じてしまうのは仕方の無い事だろうか。


 少しして、熊がドロップに化けた。


 魔石と、なぜか熊の手の平、左右一対。


 「調理に十日以上掛かると言われる伝説の料理に使え、と言う事かな?」


 「美味しいんですか?」


 「食べた事無い。食べた事のある人も知らない」


 「ですよねぇ」


 とりあえずアイテムボックスに収納。売れるかなぁ?


 ドロップ品を収納した直後、前方に気配が現れた。


 「この気配は、そこにゲートらしきモノがあるという感じだな」


 天の分析で思い至った。


 「じゃあ、今の熊は階層主? エリアボス? マジでゲームか?」


 思わず、虚空に向けて叫んでしまった。


 「ケンタ。落ち着け」


 「落ち着いてはいる。呆れかえってもいるけど」


 「我も、ケンタたちのげえむ世界を知らねば、このような事もあるのか、程度にしか思わなかったであろうがな」

 「ボクもだよ。あのげえむ世界のアレは、無駄な手間を省いて遊びを楽しくさせよう、って事だけのモノだよねぇ」


 その通りだ。元々ドロップ品とかは、敵を倒したご褒美として設定されたモノでしかないはず。せいぜい、獣を解体して皮や牙、肉を得るだろうという所を強引に短縮した結果だ。時々は、胃袋の中に宝飾品が残っている事もあるだろう。まぁ、その宝飾品と一緒に、『何か』の肉も消化されかかっているのがあるだろうけど。


 そして、エリアボスも、強さが変わるエリアに入る前に、そのエリアに入る資格があるのか? という発想で試金石代わりに設置されていたモノのはず。

 上手く敵と戦わないように避けていければ、次のエリアの強い武器を買えるかも、と言う事を無くしたかった、とも言うけど。


 そもそも、強さが変わるエリアそのものが謎でしかない。


 百の強さの魔獣が多くいるエリアに、なぜ、十の強さの魔獣が居ないのか?

 自然の摂理的には、十の強さの魔獣が多く居るエリアにしか、百の強さの魔獣は生きてはいけない。つまり、それが縄張りだ。集団で狩りをする魔獣以外は、同程度の魔獣と縄張りを共有することは出来無い。


 要は、このダンジョンは、自然の摂理を無視して、コンピューターゲームの様な都合のいい状況を生み出し、しかも作業から結果が得られるという物理法則さえ捻じ曲げている、と言う事だ。


 「天、地竜。もしこういうダンジョンを維持するとしたら、どんな仕組みと、どれぐらいの魔力が必要かな?」


 「魔力量は、使う仕組みによるから判らぬが、仕組みはなぁ…」

 「魔獣が倒れたらご褒美アイテムが出てくるのはそれなりに出来るけど、生きた魔獣を都合よく生み出すというのがねぇ…」


 「こういうダンジョンがあるんだから、不可能では無いだろうけど」


 「うん。出来無いことは無いよ。ただ、一つの書式では無理だろうから、数百のそれなりに複雑な術を同時に展開、起動し続ける力量は必要だろうね」


 「つまり、このダンジョンのどこかに、それを行っている何かがある、かも?」


 「効率的に考えると、ダンジョンはここだけじゃないから、本体は別な所に居て、ここには代理的なモノかな」


 「判った。ダンジョン考察はここまでにしておこう。おそらく、神では無いけれど、神に近い力量を持った何者かが絡んでいる事案だろうからね」


 結論の出ない考察は止めて、今はこのゲーム的な場所で楽をさせてもらおう。


 次の階層、いや、階段的なもので上下するわけでも無いからエリアと言う方がいいだろう。

 次のエリアに移動する転移ゲートがある場所に入る。

 すると、草原ではあるけれど、潅木が疎らにある情景になった。さしずめ、ブッシュエリアという感じだろうか。


 そして直ぐに敵とエンカウント。


 適当にエンカウントと言っていたけど、実は正解だったのかもね。


 で、敵はキツネだった。大きさも日本の標準的な柴犬と同程度。でも、尻尾が二本ある。


 そんなキツネが数頭、舞を踊るがごとく左右に飛び交いながら近づいて来る。


 まぁ、普通ならそう見るかな。


 「幻覚系とは、また珍しいねぇ」


 「周辺探知を使っていると、たった一頭というのが丸わかりだな」


 「それもあるけど、キツネの幻覚なら黄昏時とか夜とかが良かったんじゃないかな。なにしろ、一頭だけの影がはっきり見えているからねぇ」


 「あ、ホントだ」


 一応確認も取れたから倒すことに。小銃を構えて三点バースト。あっさりと撃沈した。


 ドロップしたのは魔石とナイフ。ナイフはいわゆる解体ナイフというもので、刀身が反っていて先が鋭いのが特徴だ。基本的に骨を絶てるほど硬く、皮を剥ぎ取るために鋭い。頑丈さを求められた結果、短く厚手のナイフになっていて、戦闘で使うには心もとない感じがする。

 本来なら、俺たちのような冒険者が必ず持っていなければならない標準装備なんだけど、それをこのダンジョンで初めて得られた、ってのは皮肉なんだろうか。


 一応俺たちもナイフは持っているけど、コンバットナイフだから、長すぎて解体には微妙に向かない。大雑把に切り裂いて、魔石のみを抉り出すのには使えるけどね。


 妙にテンション上げて喜んでるサヨは放っておいて、さくさく次の獲物を探す。


 まぁ、探すと言う程も無く同じ幻覚を使うキツネを発見。テンション上げたサヨが一薙ぎで終了。ドロップも少しだけ意匠が違うが解体ナイフだった。


 サヨには、全員に行き渡るまでは自重してくれと言っておいたから、一人でガメる事は諦めている。

 でも直ぐに溜まって、微妙な意匠違いを見比べて楽しんでいるけどねぇ。


 十回ぐらい幻覚キツネとエンカウントしたんだけど、一度しか戦った記憶が無いのは無視するとして、次の種類の敵が現れた。


 大蛇。


 伸ばせば十メートルぐらいはいくんじゃないかと言う、最大太さ五十センチぐらいの大きな蛇だ。それがほとんど音を出すことも無く近づいて来る。


 まぁ、周辺探知で丸わかりなんだけどね。


 だから、小銃を構えて狙いをつけておく。そして大蛇が顔を見せた。


 俺はその大蛇の目を見て、条件反射的に真横へと跳躍した。


 「目に何かある! 種族魔法かも知れない!」


 その言葉で全員が構える。


 目に関する魔法だと、魔眼や邪眼、麻痺、石化、混乱、眠りとかの可能性が高い。どれもなすがままで、一度掛かったら気がつくことも無く蛇の腹で消化されていた、という事になるだろう。


 そして天と地竜がその大蛇を見て調べる。


 「確かに魔法が目に掛かっているが、あれは内向きではないか?」

 「あ、本当だ、あれって、視界強化じゃない?」


 「え? えっと、それって、目を良くしているって事?」


 「たぶん、そうじゃないかな?」


 「「「………」」」


 ターン!


 小銃の一発が大蛇の頭を吹き飛ばして戦闘は終了した。


 「そうか、そう言えば、まだ、そこまで怖い相手が出てくるようなレベルじゃないんだった」


 「まぁ、そうだが、油断は禁物だぞ?」


 「うん…」


 出てきたドロップは魔石と皮袋だった。荷物、水、財布にと、冒険者にとって皮袋の需要は高いよねぇ。でも、なんでこんなに虚しいんだろう。


 その後、キツネと蛇がランダムに繰り返された後、エリアボスと遭遇した。


 出てきたのはライオンモドキ。


 ライオンはたてがみが有名だけど、首の周りのみにあるから映えると思う。でも、全身がその量でフサフサなのはどうなんだろう。

 寒冷地仕様のライオンなのかな。

 モフモフを愛するモフリストなら愛せるのかも知れない。


 で、さっくり倒してドロップは魔石と寒冷地ライオンの毛皮。まぁ、悪くは無い?


 その後もサクサク行き、気がつけばエリアを十ほど踏破していた。


 今日はここで野宿して、続きは明日にしようという結論に。


 「ダンジョンだからか、明るいけど日照って訳じゃないんだねぇ」


 「夜が無いのに、ここの魔獣は平気なのでしょうか?」


 「寝る事が必要な生体なのかも不明だしね。まぁ、たぶん、ダンジョンの外に出たら寝るとは思うけど」


 まず天に結界を張ってもらう。そしてアイテムボックスから好きな食料を取り出して晩餐。簡易ベッドを出して就寝となる。

 お城で寝るよりも気が休まり、安眠出来そうなのは言わないのがいいよねぇ。


 翌朝(?) 相変わらず時間変化が判らないダンジョンで朝の支度を済ませ、体をほぐしてから出発。


 エリアを十箇所踏破して得られたのは、剥ぎ取りナイフから始まって、皮袋や皮や薄い木で出来た盾。肩当、胸当て、手甲、脛当て、革紐を編みこんだサンダル、補強がされている帽子、分厚い皮のグローブなどなどだった。


 完全に初心者冒険者のセット装備だよ。


 当然、俺たちにはどれも使えない。まぁ、魔石は出てくるので完全にハズレというわけでもない。使えない装備品でも、換金すればそこそこの金額にはなるだろう。


 少しずつ魔獣も強く個性的になっていき、十一箇所目のエリアでは水流をぶつけて来る魔法を伴っていたり、石つぶてをぶつけて来る魔獣が出てきた。

 始めのうちは一箇所のエリアに二種類程度の魔獣だったのも、十一箇所目では六種類の魔獣がランダムで出てくる。


 ドロップする装備品にも、所々に金属部品が使われている物が出てきて、これからの期待が大きくなる。


 「なるほど。これだと、少し無理してでも先のエリアに行きたくなるよねぇ」


 「そういう罠なんですね」


 俺のつぶやきに、金属パーツで補強された盾をアイテムボックスに収納しながらロッカクが応えてくれた。

 ちなみにナイフ関連は鉈と呼べるような物になっているが、それらも変わりなくサヨが収集している。


 そして、午前中だけで二十箇所目のエリアに到着。


 エリアボスは巨大カブトムシだった。


 たぶん、硬化系の強化魔法だったんだと思う。


 本来なら手持ちの武器で切れない、突けない、叩いても駄目、とかいう展開があったんだと思う。でも、トーイの一撃で転がされ、硬さに自信があったであろう甲殻はサヨに簡単に切り裂かれ、虫なんだけど、涙目になっている幻視が見えた気がした。


 ドロップは魔石とカイトシールド。カイトシールドは逆三角形を上下に引き伸ばしたような大盾だ。


 サヨとトーイが『ハズレだねー』と話していた事は、カブトムシさんには内緒にしておこう。


 午後は調子に乗って三十五箇所目のエリアを突破したところで休む事にした。


 そろそろ俺たちにとっても脅威となる魔獣も出てきている。でも、強さが順々に上がってきている所為か、俺たちの対応も様になって来ている。


 翌日。四十箇所目のエリアボスを倒したところで昼食休憩となった。


 やっぱりペースが落ちているが、一箇所のエリアを踏破するのに一日から二日掛けるというのも当たり前だと思うから、まだ早いペースなんだろう。

 まぁ、少しダレて来た、というか疲れて来た? という雰囲気もあるから、どこかで一回リセットする必要もあるかも知れない。


 と言う事で、今日の午後は攻略はしないで、各自体と心を休めるように指示した。


 本来なら一度ログアウトをした方がいいのだろうが、それでまた気持ちが冷めるのも危険だと判断した。

 ある程度モチベーションが無ければ、全力を出しているつもりでも何処かに気が抜けている箇所が出てくるかもしれない。

 なので現場での休憩が一番。


 俺は小銃を少しだけバラし、試験管を洗う時に使うブラシとそっくりな銃口洗浄ブラシで筒の中にかすかに残る煤を取り除いている。さらにマガジンから銃弾を全て取り出し、潤滑油のスプレーをしてから乾かすなどの手入れをしている。


 もっと細かいところまで分解して整備することも出来るらしいが、俺自身が慣れていないので断念。こんなところで組み立てられなくなったら泣いちゃうよ。


 サヨも刀に付いた油を拭っている。って、なんで四本もあるの? あ、ドロップ品のナイフも磨くの? 鉈まで?


 まぁ、嬉しそうにしているから放っておこう。


 トーイはナックルやブーツ、肘当てや膝当てなどを外して拭いてから干している。ボディアーマーも外して干しているけど、サヨに言われて大き目のワンピースを着ているので目の保養にはならない。


 それでもストレッチしていると、体の線が判るようになるから目の毒だ。


 ロッカクはドロップした魔石を粉にして、天と地竜とで魔法回路の実験をしている。


 こういう休憩中にしか出来無い事と割り切っているので、特に問題は無いだろう。


 そして、夕食前には全員がストレッチしていた。


 体が動かなくなる恐怖は、皆に染み付いているようで少しだけ安心した。


 次の日は朝から絶好調。


 皆、昨日戦えなかったストレスを発散しているようだ。ロッカクでさえ嬉々として魔法の杖を振り回している。

 まぁ、本人曰く、とばっちりです。と言う事なんで、何か思う所があるのだろう。

 ロッカクに止めを刺させるために、ロッカクの近くに何頭も連続で放り投げ続けたのは違うだろうし、何がとばっちりなんだか良く判らない。困ったものだ。


 そして、本日最強の敵は、毒を吐き散らすニワトリさん。


 頭の鶏冠までの高さが二メートルぐらいという高身長で、羽を横に精一杯広げたら四メートルぐらいという大きさを持つ。


 あの、何を考えているのか判らない動かない目と、鋭いくちばしを首と頭の動きで突き立ててくる機敏すぎる動き。その上に呼気が毒を帯びているという凶悪さだ。


 まぁ、銃の敵では無かったし、皆飛び道具としての魔法も習得している。ちょっと命中させるのが難しかしく、そのために時間が掛かったという程度だ。


 で、ドロップ品は魔石と生卵十個。


 サヨさん? プリンだーって喜ばない! 今のって立派な鶏冠のある雄鶏だったでしょ! そんな卵を食べるっての? ロッカク! ヒキガエルに温めさせようとか言うんじゃない! 天と地竜も面白そうだとかノリノリになってるんじゃない! 頼む! 耐えて! 無かった事にー!


 俺一人だけの苦闘がここに。


 そうか、コレがダンジョンの過酷さか。正直舐めてたな。人生勉強し直して来ますので、帰っていいですか? 駄目? どうしても?


 チッ。


 また一人、ダンジョンの敗北者がここに誕生した。


 「ケンタさーん。置いていきますよー」


 ああ、悪魔が俺を新たな地獄へといざなう。なう。


 そこから、だろうか? 出てくる魔獣の質が変わった。


 トカゲだ。


 ガラパゴスオオトカゲのような巨体。ワニの四つの足を長くした様なスタイルで、口はワニそのもの。しかも、口先から本物の炎がチロチロとあふれ出ている。


 「大航海時代、ガラパゴスのオオトカゲをイラストでされて紹介された時に、『ドラゴン』の認識が火を吐くトカゲに誘導されたという噂を耳にしたことが、あった様な、無かった様な。ああ、元々ドラゴンはヴァイキングの非道さや強襲能力を伝えるためとか………」


 「ケンタさん! しっかりしてください!」


 「はっ! さっきのバジリスクもどきの影響が残っていたか」


 なんか、本当に無駄な知識をつぶやいていたらしい。


 「さっきのはバジリスクもどきだったんですか?」


 「バジリスクはニワトリに似た蛇の王で、尻尾が蛇なんだ。さっきのは尾が鳥の尾羽だったから別物だろう。

 というか、俺たちの神話や伝承や物語を当てはめるのも危険だろうね」


 出番待ちしてくれている火吹きオオトカゲが不憫だからさっさと始めよう。


 「なんか、本当に説明が終わるのを待っていたような」


 「魔法の呪文詠唱を警戒していた、とも考えられるけどね。まぁ、今まで人間とか見たこと無い連中のはずだから、真偽のほどは不明だけど」


 と言うわけで。


 タタターン!


 俺のパチモン臭いμ4α1のバーストモードで三発の連射で終了した。


 「哀れだ。態々出番待ちしていたのに引き金一回で終わりなんて哀れだ」


 ロッカクがなんか言っているけど無視。実は、三発の内二発が弾かれていた。見た目以上に硬いか、それとも種族魔法か。


 出てきたドロップは魔石とショートソード。


 「ついにショートソードのレベルになったかぁ。って、天? 地竜? コレ見て」


 サヨに奪われる前にショートソードをベアーズに見せる。


 「うむ。軽くだが炎の系統の魔法を仕込まれているな」

 「多少火に強い程度かな? コレぐらいなら今のボクでも簡単に出来るけど?」


 そこでサヨに奪われた。まるで舐めるように見ている。うん。身の安全のために放っておこう。


 「鍛冶で作る剣に火の耐性って、誰得?」


 「確かに修理などはやり難くなるだろうが、炎の弾を打ち出してくる相手には少しは有効かも知れん」


 「その手の火の耐性って、服とか鎧とかに付与すればお得じゃないのかな?」


 「ボクもそう思うよー」


 俺と天と地竜との会話は、サヨには聞こえていないようだった。


 次に現れた魔獣はイタチ。


 強化されていると思われる速度で走り回り、強めのつむじ風を常に纏っている。


 現れたと同時突っ込まれ、いきなり懐に飛び込まれた。だけど、風を纏う事ならサヨの方が強いし、反射速度は格闘技で戦い続けてきたトーイも速い。


 三頭いたイタチは、急に現れ、急に飛び込んできて、急に倒された。


 本当にあっという間だったよ。ドロップが出るまで待つほうが長かったねぇ。


 そのドロップは魔石と指輪だった。


 天と地竜に見てもらったところ、素早さを若干上げてくるような補正が付く、かも知れないという、微妙な物だった。


 「態々、指輪という物を使って行う魔法でも無いな」

 「ボクなら、この十倍の威力で付与することも出来るよ。でも、それでも大した補正じゃ無いと思うけどね」


 ベアーズの論によると、強化はその場で掛ける魔法の方が威力も効率も高いそうだ。魔道具で再現されたモノは、直接魔法と比べると三割から五割程度。そして物に付与するのは、魔道具の三割がせいぜいらしい。

 つまり、その場で直接魔法を掛けられた場合の一割程度の補正だ。それも、高効率で欠けた場合で、術者の技量や付与する物の魔法耐性なども関わってくるらしい。


 さらに色々見てもらい、その性能を分析した結果、天の強化魔法の約三パーセントの威力で、常時発動だけど一ヶ月ぐらいで効果が消えるかも、という指輪だった。


 「つ、つ、つ、使えねぇぇぇぇ」


 指輪だから、手に道具を持って作業や戦闘を行う者には向いていない。トーイなら問題無さそうだが、指輪の強度が足りなければ逆に自虐の為の責め具にもなってしまう。


 金属製なら殴った時に指輪がひしゃげ、指の血行を遮ぎ続けるとか。木製なら砕けた破片が指を傷つけ続ける、とかになりそうだ。特にヘビーナックルというグローブをつけているからなおさらだね。


 この指輪の材質は不明だけど、トーイの攻撃力に耐えられるとも思えないのでお蔵入り、じゃなくてアイテムボックス送りになった。そのうち売ってしまおう。


 その後も火吹きオオトカゲとつむじ風イタチが続いた。


 次は小さな魔獣が現れた。


 小さくとも数がいるならかなりの脅威になる。


 かなり小さい。俺の握りこぶしを一回り大きくしたぐらい。丸い体に丸い頭が乗っていて、細く長いくちばしが生えている。


 「あれって、キウイ?」


 皮は厚目だが、中は柔らかくジューシーな、緑の果物。ちょっと酸っぱくて苦手だという人もいるけど、概ね好評なニュージーランドのフルーツ。


 ………。


 いや、一人脳内ボケは止めておこう。心に大ダメージのツッコミをされるよりはいいかな、って思ったけど、別の種類のダメージが心に突き刺さる。


 でも、本当に飛べない鳥のキウイにそっくりなんだよ。それがピョンピョンと飛び回りながら俺たちの周りに集まってくる。


 そして。


 ロケットダッシュで突っ込んできた!


 鋭く細長いくちばしを真正面に突き出し、風魔法らしきモノでぶっ飛んでくる。ああ、くちばしを中心に体中に硬化系の強化までされている?


 バッティングセンターのボール打ち出し機に周りを取り囲まれている気分だ。


 これはどうしたらいいんだ?


 あ、トーイが喜んでいる。


 飛んで来る玉、いや、キウイをアッパー、フック、キックを織り交ぜて弾き飛ばしている。少し離れた場所では、サヨが居合い切りごっこをしている。


 ああ、楽しそうだなぁ。


 「ロッカク。今度金属バット作ってくれるかな」


 「いいですねぇ。金属バット、棘付き金棒、テニスラケット型とかもありかな」


 テニスラケット持って、キャッキャッウフフとキウイもどき魔獣を打ち合うサヨとトーイ。

 駄目だ! 簡単に想像出来てしまう。どっかの王子様みたいな技のオンパレードも見れるかな? たぶん、キウイもどき魔獣の方が保たないだろうな。


 たまにサヨとトーイから離れた位置で俺とロッカクにも飛んで来るけど、避けるだけなら問題ない。避けつつ、ナイフで打ち落とす事が課題になるって感じだ。


 ドロップは今までよりはやや小さめの魔石と服に縫い付けるタイプのボタン。それが出て来たキウイもどきの数だけ転がっている。

 もちろん、集めるのが大変だったよ。でも、ボタンは数が揃っていないと見栄えが悪いから、同じ形のボタンなら出来るだけ集めないとね。


 「弱めだけど、種族魔法を二種類同時に使ってくる魔獣になってるね」


 「強い魔法を二種類以上同時に放ってくる魔獣は珍しいが、コレぐらいの弱い魔法を二種類というのはそこそこいるからな」


 「そこそこ、かぁ。つまり、俺たちの強さもそこそこってわけだ」


 「人間限定であるならば、お前たちに敵う者などいないだろうがな」


 「人間なんか問題にしない魔獣がいっぱいいる世界でそう言われてもねぇ」


 しばらくトカゲとイタチとキウイをランダムに遭遇しながらエリアボスに到達した。


 「やはり、ダンジョンとは過酷な試練の場なんだな」


 俺たちの目の前には、次のエリアへと続く転移ゲートを開かせるためには絶対に倒さなければならない敵が存在している。


 「カピパラだな」


 「カピパラですねぇ」


 「動かないな」


 「動きませんねぇ」


 ソレは俺とサヨが無駄話をしている間も動かなかった。当然絶句していた間も動いていない。


 カピパラ。それはげっ歯類最大の大きさを誇る南米原産のネズミ。夢の国ではなく温泉に居るとの評判も高い。

 大きさも俺たちが知るカピパラと変わりなく、全長も一メートルと半分は無いぐらい。


 それが、俺たちの前にスフィンクスのような格好で座っている。


 「ど、どう攻撃すればいいんだろう?」


 「えっと、どうします?」


 おそらく魔獣なんで、カピパラもどき、と呼ぶべきなんだろう。それをどう攻撃するか。打撃はなんとなく効き難そうだ。丸っぽいけどぎっしり中身が詰まっている感じがするんで、斬撃も有効かは判らない。なら、魔法か銃撃かになりそうだ。

 今後も似たような魔獣が現れた時用に、一応の攻略法や弱点なんかを知っておきたいと思っているんだけど、その取っ掛かりが無い。


 「あ~、とりあえずいつもの様に、打撃、斬撃、魔法、銃撃の順で試してみようか」


 「はぁ」


 トーイが気の無い返事をする。攻撃されている訳でもないのに、いきなり殴りつける行為に思うところがあるんだろう。当のカピパラもどきも、目を瞑って寝ているような感じだしねぇ。


 「どうする? いきなり銃撃から入って終わらせる? それでもいいけどね」


 「いえぇ。一応殴ってみますぅ」


 そう言ってトーイは一度両腕を前に振ってから後ろに戻す勢いを使ってダッシュを決め、あっという間にカピパラもどきの目前に迫った。位置的にはカピパラもどきの左前。右拳がカピパラもどきの真正面に丁度良く入る角度だ。


 そして、トーイの右拳がカピパラもどきの顔面に突き刺さろうとした瞬間、トーイは全力で左後方に飛んだ。


 その後もダッシュを繰り返し、回り込んでから俺たちの所に戻った。


 「トーイ?」


 「すみませんでしたぁ。なにか、嫌な感じがしましてぇ」


 「そういう嫌な感じで動くのは推奨するけど、何がありそうな感じがした?」


 「良くは判りませんでしたがぁ、撃つ前にこちらが攻撃されるような気持ちで飛びのいてしまいましたぁ」


 特に格闘技を主としているトーイのこういう勘はあてになる。


 「判った。皆は離れて。俺が銃撃で遠隔攻撃してみる。天、銃口の部分だけ穴を開けた結界って出来るかな?」


 「うーむ。かなり難しいと思われるが」


 天の張る結界って、いわゆる壁を作る防御壁では無くて、空間自体を断絶する境界を作る術だそうだ。そのため、同じ空間を作る系統の魔法か、空間自体を壊すレベルの攻撃には破られる懸念があるけど、通常の打撃とかにはほぼ無敵らしい。

 まぁ、空間を断絶している境界線の所為で空気の圧縮とかが起こるから派手な音は出るらしいけどね。


 そこに、銃口の幅だけ通り抜ける穴を開けようとしたら、宇宙から地上に真空で出来たチューブを作るような苦労が必要らしい。


 おもちゃの注射器のシリンダーを引くだけでも苦労していた俺にとっては、どれぐらいの力と技が要るのか想像もつかない。


 「天竜には結界維持で力を使ってもらって、ボクがそこに穴を開けるってのであれば、短時間は出来そうな気がするけど」


 思わず、出来るんかい! とツッコミそうになる。地竜は簡単そうに言っているけど、実はとんでもない事を言っているんだよなぁ。


 「ゴメン、出来るだけ短時間で済ませよう。天、地竜、それでいい?」


 「ケンタが謝るような事でも無いと思うがな。我の方はいつもの様に結界を張るだけだから問題は無い」

 「ボクも大丈夫だよ。こんな事、こういう場合じゃないとやらないだろうし、やれないだろうしねぇ」


 地竜がいつも通りに、知識欲からの行為だと言ってくれるのが、少しだけ救いになる。


 俺は方膝をついて小銃を構える。安全装置はバーストに合わせる。


 「引き金一回で三連発。穴はほんとに銃口部分だけでいいし、撃ち終わったら直ぐに穴を閉じて欲しい。結界を破る地竜が合図をする? それとも天が合図を?」


 「我が合図をしよう。地竜は穴開けに集中だな」

 「判ったよー」


 そして、コッキングレバーを引いてからカピパラもどきのデコの真ん中に照準を合わせる。


 「こっちは準備完了」


 そう言うと、まず天が結界を張る。そこに地竜が何がしかの力を加えるのが感じられた。ハッキリとは判らないけど、大きな力が目の前に集中している。


 「今!」


 タタターン!


 天の合図で反射的に引き金を引いた。


 そして、トーイの懸念がハッキリした。


 俺に向かって、撃った弾丸がそのまま跳ね返ってきた。しかも、銃口の真正面、やや。上結界を閉じられなくても当たらなかっただろうけど、ほぼ誤差という感じで帰ってきた。撃った弾丸と同じぐらいの速度っぽいから、ほぼ音速だったかも。コレが弓矢とかの攻撃だったら、まず間違いなく射手が倒されてたな。


 で、そのカピパラもどきは、銃弾をデコに受けて死んでいた。


 しばらく待ち、カピパラもどきがドロップに変わってからその場に皆で集合。


 「どうやら、跳ね返せるのは始めの一発だけだったみたいだね」


 「はいぃ。わたくしにもそう見えましたぁ」

 「拙者もそれを確認した。間違いない」


 トーイと月光がしっかりと見ていてくれた。


 「しかし、一発限りとは言え、攻撃を完全反射する、ってのは怖いな」


 「始めに弱い攻撃を出してから、次に本気のを出せば?」


 地竜が攻略案を出してくれるが。


 「反射が任意だと、こちらも騙される場合があるしね」


 「そっかー」


 「どういった攻撃が有効ですかね?」


 「弓矢とかの、撃ってから避けられるのとか、上から落とすようなのとか、かな」


 「ああ、銃弾を正確に反射出来たって事は、反射角度を弄れないという事でもあるんですね」


 「それも、まぁ、確実では無いけどね。これから敵のレベルが上がるたびに、そう言ったことは確認しないと危ないだろうね」


 全員の頷きで納得を得た。


 カピパラもどきを倒して出てきたドロップは魔石と小さく丸い盾だった。かすかに衝撃反射の付加が掛かっているらしいけど、特に欲しいと言う者はいなかった。

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