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無理ゲーオンライン  作者: IDEI
37/56

36 モチベーション

 次の日。


 現実での、通常の、昼間の活動を終え、日記を事細かに書いてから、異世界での活動記録としての日記を読み込む。

 やはり、現実世界での活動は、異世界活動の記憶を薄れさせる影響を持つようだ。


 状況はしっかりと思い出せるんだけど、実感が少しだけ薄い。


 気持ちが入っていないという感覚が残る。これは、所詮ゲームの中の世界、という気持ちがハッキリするためだろう。ベッドの上に置かれたVR没入装置が俺を白けさせる。


 まぁ、入ってしまえばまた変わる事になるのは実感している。それは、勉強でも仕事でも同じ事は起きている。VRゲームと異世界を行き来している俺には、その感覚が生々しいというだけだろう。


 感受性が上がっていると言う事だろうか? それで白けているのでは本末転倒って感じだけどねぇ。


 昔から、下手な考えは上手くない、という故事もあるし…、あれ? 無駄な努力は無駄だ、だったっけ? 三遍回ってタバコは健康を害します、は違うな。

 ま、まぁ、ともかく? 自分で自分の心を監視して、心情的に楽な方へと行こうとするのを気をつける、という事ぐらいしか無い、って事だな。


 えっと、井の中の湧き水? 濡れ手にハンカチ? 糠に鉄釘? 飛んで火に入る○ー○ー人形? 光陰秒速三十万キロ? 故事、ことわざって難しいな。


 ログインすると、既に全員が集まって歓談していた。


 なので早速ネット検索&閲覧用モニターと読み出し式掲示板閲覧モニターを設置する。一度ステータス画面を出して、購入アイテムの画面から出さないと駄目らしい。


 「あ、早速買ったんですか?」


 ロッカクが覗き込んでくる。


 「天と地竜とポーポーたち、月光をクランハウスにおいて、俺たちだけがログアウトとかすれば、その間にネットで外の様子とか、俺たちの現実とかを調べられるかな、ってね」


 「おお、それは良いな。ケンタたちがろぐあう、とか言うので現実に戻っている間の、こちらでは三日か四日ほどの時間を調べる事に使えるわけだ」


 「ええ? そんなのがあるの? 早速使おう! すぐ使おう! 今使おう!」


 俺の説明に天と地竜が騒ぎ出す。


 「落ち着け。ケンタたちの時間経過を考えろ。今使っても、異世界から帰ってきても、使い始めの時間は同じに近いぞ。それにケンタたちと離れると、向こうでの経験が出来ないという事になるわけだぞ」


 「ああ! そうだったー! あー!」


 天の説得に地竜が悶絶している。そう、俺たちは特殊な時間経過の中にいるんだよねぇ。


 俺たちはエリア5に出て、軽食屋で食料と飲み物の補充をする。他に俺は減った弾丸の補充。ロッカクは建築関係の資材を売っているところで使えそうな資材を買い足し、サヨは武器屋で刀を選んでいる。トーイはサヨについて行き、色々説明を求めているようだ。


 弾丸の補充も終わり、他にめぼしい銃器なども無かったため、皆にメールを打ってクランハウスに戻ることにした。


 クランハウスではちょっとの時間だけ、とか言いながら、早速地竜が操作方法を天に聞きながら検索している。一応俺からも、『日本 都市』という検索ワードを教えておく。何らかの取っ掛かりとかは必要だろうからね。


 俺は掲示板を起動させて、最近の攻略情報を閲覧する。皆、どの辺まで行ったかなぁ?


 って、既にエリア5まで来ているのがかなりいる。

 エリア6へのボスフィールドが見つからなくて、どうしたらいいのか、という書き込みが目立つ。

 たぶん、俺たちを見て言っているのだろうが、『ペット』キャラがいないと駄目なのか? という書き込みまである。

 他に、ついにPKを趣味とする連中が復帰してきて、エリア1を混乱させているらしい。なぜエリア4とか5じゃないのか? と疑問に思ったけど、PKしても相手の装備を取ることが出来ず、更に周辺探知だと敵性プレイヤーは確実に探知されるという状況で、一種の不遇職扱いだと言う事だ。


 諦めろ、って事だね。


 このゲーム。魔法という理不尽な力は存在するけど、自分自身の、実際に体を動かすという意識の性能が勝敗を分ける。現実の体では不可能な動きでも、物理的に可能なら、実現可能という可能性を含んでいる。それを実現させるには、目的を持ってVRの体を鍛えないとならないけど。


 つまり、PKしたければ、PKしたいプレイヤーよりも強くなるよう努力するしかなく、PKすると八分にされ、プレイヤーを倒しても金にならない。

 PK情報を隠蔽する魔法でも発見されれば、少しは変わるだろうけど、PKしている連中がその魔法を発見できる確率も低いだろうとしか言えない。


 エリア1で、エリアボスを倒すために基礎的な実力上げをしている連中を意味無く倒して自己評価を下げるだけ、なんだねぇ。


 PKするような連中の事はどうでもいいや。


 他に情報を調べてみると、攻略まとめサイトがあるようだ。ネットは地竜が噛り付いているからここでの情報収集は諦めるか。とりあえず掲示板のタイトルを流していくと、魔法を見つけた、などの記述を見つけた。開いてみると、俺たちが見つけた魔法以外の情報らしい。内容は『鑑定』らしいが、見つけたプレイヤーが情報公開を拒否していて、本人の証言以外の情報が皆無という事だ。


 俺が情報をどんどん公開するからだろうが、このプレイヤーに対しての罵りが酷い。ケチだの嘘吐きだのというモノから始まり、何故そんな単語が? というようなモノまで、酷い内容のオンパレードだ。


 たぶん、情報の価値を上げて、高く買わせるつもりだったのだろうが、ほとんど逆効果の結果になっている。これでは、今後の情報が出難くなりそうだ。


 しかし、『鑑定』かぁ。これは欲しいなぁ。


 『鑑定』があれば、攻略が一気に進みそうだから、このゲームの特徴としては存在しない可能性の方が高いけどね。


 まぁ、駄目元で試してみようと思い立ち、可能性の高い魔法屋へと向かった。


 魔法屋の中は相変わらずだ。


 カエルらしきモノがぎっちり詰まった瓶。動いている心臓が入っている瓶。何かの目玉が詰め込まれている瓶もある。あの生きたまま標本として釘に打ち付けられているタコって、なんの役に立つんだろうねぇ。


 試しに聞いて見る事にした。


 「あのタコはいくらで売ってくれる?」


 「さて、さて、じゃよ」


 あ、久しぶりに聞く否定のセリフだ。これは、条件が合わないか、そもそも売り物じゃ無い可能性もある。

 つまり、今回は無理と言う事だ。


 で、別のモノで試すことに移行する。


 「あの鎧を着込んだ猫はいくらだ?」


 「さて、さて、じゃよ」


 「あの頭が二つあるカラスはいくらだ?」


 「さて、さて、じゃよ」


 「この動いている心臓はいくらだ?」


 「さて、さて、じゃよ」


 「この目玉はいくらだ?」


 「五千Gじゃよ」


 「あのゴスロリのアンティー…、え?」


 「さて、さて、じゃよ」


 えっと、目玉だったっけ。


 「あの目玉はいくらだ?」


 「五千Gじゃよ」


 やったね。


 「この目玉が買える条件はなんだ?」


 「ここのエリアに到達する事じゃよ」


 ここはエリア5。なるほど、エリア1では買えないから、皆まだ気付いていないのか。


 「この目玉はどんな能力がある?」


 「さて、さて、じゃよ」


 能力については教えてくれないか。実際に試すしか無いんだろうな。


 呪いの目玉だったらどうしよう。


 「その目玉を一つくれ」


 ダイアログで五千Gを支払うと、魔法屋のおばばはトングで目玉を掴んで俺に差し出してきた。そんな扱いでいいの? まぁ、データだもんなぁ。


 で、手で受け取ったけど、どうすればいいんだろう。聞いてみるしかないか。


 「これはどうすればいい?」


 「自分の好きな方の目に入れるんじゃよ」


 そう言われ、自分の左目に近づけてみると。次の瞬間、ニュルッと俺の目玉の中に入る感触がぁぁぁ。なんてこったい!


 「な、な、な、大丈夫なのか? これ」


 アイテムボックスの中から鏡を出して覗いて見る。そこには、普通に俺のアバターの顔があった。特に目も変わっていない。


 でも、次の瞬間、目の前に文字が浮かんだ。


 『鏡。ポーポーの居た世界で作られた鏡。反射率七十四パーセント。汚れ有り』


 「え?」


 一通り文字を読んだら、それは消えた。つまり、今のは俺が手に持った鏡の説明か?


 気を取り直してもう一度鏡を見つめると、同じ文言が浮かび上がった。


 鏡をアイテムボックスに収納し、今度は動いている心臓が入った瓶を見つめる。


 『情報不足』


 どういうことだ?


 鎧を着た猫を見る。


 『情報不足』


 自分のグローブを見る。


 『エリア3で注文して購入したグローブ。ミィの世界の魔石を装着してあり、魔法の発動媒体として機能している』


 どういった基準なんだろう。部分的には『鑑定』としての機能っぽい事はしているようだけど。


 そこで俺はステータス画面を開いた。


 あった。


 『認識記憶・識別眼球』


 「認識記憶?」


 「ひょっ、ひょっ、ひょっ。認識記憶識別眼球は自らが知っている情報を教えてくれるんじゃよ」


 俺が悩んでいると、いきなり魔法屋のおばばが説明しだした。


 一応プレイヤーにヒントを出すようなんだけど、どんな条件でそれが起こるか判らないのが難点だ。いきなりだと心臓に悪いよ。もしもの時はこの動いている心臓を貰おう。


 「知っている情報じゃ意味が無いだろう?」


 「ひょっ、ひょっ、ひょっ。多くの物の中で、知っている物を探すのに使うんじゃ」


 「オン、オフも出来るんだよな?」


 「出来るんじゃよ」


 つまり、『薬草』を知っていれば、草原の中で『薬草』のある場所が判るというわけか。


 毒を知れば、暗殺者が毒のついたナイフを持って近づいて来るのも判る? 魔獣も種類ごとに判別できるって事か。これは使い方次第でかなり便利になるな。


 ロッカクにはぜひ持っていてもらいたいな。サヨとトーイはお好みで、天もお好みで、だな。


 俺は走ってクランハウスに戻ると、帰ってきたばかりのロッカクに話す。


 「なるほど。それは取得しておくべきですね」


 「ケンタよ。なぜ我はお好みで、と言う事なのだ?」


 「天は多くの事を知っているから、それだと逆に目の前が煩くなり過ぎるかも、と思ってね。でも、普段はオフにしておけば問題ない、というのであれば、ぜひ取得しておいて欲しいよ」


 「私たちも?」


 「ああ、サヨとトーイも、もしも単独行動が必要になった時にあると便利だけど、使わないなら使わないなりに行けそうだから、ほんとに好みでいいよ」


 で、結局、サヨ、トーイ、ロッカク、天が取得した。地竜は悔しがってたけどね。ポーポーや月光は、機能的には劣るかも知れないけど、元々同じような機能は持っているそうだ。元の知識が少ないから活躍していなかっただけ、という主張だった。


 これは『鑑定』とは違うけれど、似たようなスキルっぽいものだ。これを情報として上げるかどうかを悩んだ。まぁ、いろいろ騒ぎになっているようだから、それを収めるためにも教えておいた方がいいかも。と言う事で、掲示板に書き込んでみた。


 『俺は何故かテディベアを愛でる者と呼ばれているケンタだ。何故このように呼ばれているかは本当に謎だ。それはともかく、今日知り得た情報を公開したい。エリア5の魔法屋で瓶に入った目玉を一つ買った。これはエリア4以前では買えない物らしい。この目玉は、アバターの目に同化して、自アバターの知っている情報を表示してくれる鑑定モドキだ。これの活用法は各自で考え出して欲しい』


 そう書き込んだら、レスが凄い勢いで流れ出した。レスでも語られているけど、元ネタの俺の投稿が何処に行ったかも判らなくなるほどだ。で、引用元という意味のアンカーが乱立した。

 反応もさまざまで、「使える!」「使えない!」「生産職系には必須じゃね?」「自力で選別しろ」などなど。

 これで、鑑定に関する騒ぎも少しは収まるだろう。


 で、昨日、ログアウト前に懸念していた事が勃発した。


 「これは使えそうですから、一度、天さんと地竜さんの世界に行って、薬草とかを集めに行きません? 魔石も必要ですし」


 ロッカクがそう言い出した。


 「ああ、昨日懸念していた事が現実に…」


 「え? ああ!」


 「判るよ。気持ちはものすごく判る。しかも発端が俺だしねぇ」


 「えっと、その…」


 「冷静になった、と言うより、冷めちゃったって感じなんだよね? 判るよ。俺も、そんな感じで行ったり来たりしてたからね。

 だから、ここで、冷静になって、冷めちゃった頭をさらに落ち着かせよう」


 そう言って、俺は全員を座らせ、各自が用意した飲み物を飲んで一息つくことを提案した。それからしばらく、何も言わないまま、ボーっとお茶を飲む。


 そして、一杯のお茶を飲み終わったタイミングで会話を再開する。


 「まず、用件があるのが、月光の世界の、アレンストを襲っている魔獣が、人為的な操作をされているかの確認と対処、だね。

 これは時間が掛かる可能性が高い。場合によってはまた二週間以上掛かる場合も想定しなくちゃならない。

 それとは別に、竜の世界のゼンチェスに行って、自由に薬草や魔石を集めに行くという息抜きもしたいという気持ちもある。あれから半月以上経っているから、ミスターも何かを見つけたかも知れないし、ギルドや城が治療系の技術をどうしたのかの経過も知りたいしね」


 「あれ? 竜の世界で半月、って」


 「うん。ゲームの世界は別だけど、異世界は同じ時間軸にあるらしい。竜の世界で十日過ごせば、月光の世界でも十日経った後の世界になっているはずだよ」


 「じゃあ、竜の世界で十日過ごしている間に…」


 「そう。必ず、と言うわけでは無いだろうけど、都合のいい期待をかけて賭けに出るようなもんだね」


 「なら、月光の世界で決まりですね?」


 「それが、ねぇ。ここで俺たちが竜の世界に心が動いたのが、何らかの理由があるのかも、という可能性もあるんだ」


 「そんな事を言ったら、どうしていいか判らなくなりますよぉ」


 ロッカクが呆れている。サヨとトーイも似たような表情だ。


 「天と地竜はどう思う?」


 「我はケンタの決めた通りでいいと思うがな」

 「ボクは心が動いた方というのが重要だと思うけどね」


 「ポーポーはどう思う?」


 「ボクはサヨが決めた方でいいよ」


 「月光は?」


 「拙者もトーイ殿の決定に任せる」


 「じゃあ、四人で決めようか。一つ、月光の世界で一段落つくまで滞在。二つ、竜の世界で薬草、アンド魔石狩り。三つ、ポーポーの世界でガラクタ狩り。四つ、妖精の世界での冒険初め。五つ、このゲーム世界で攻略を進める」


 指を一本一本立てていきながら分別した。


 「え? 五つですか?」


 「思いつきだけど、どれも重要そうだったしねぇ。と、言うわけで、せーので指の本数を合わせて出してくれ」


 「え? いきなり過ぎますよ?」


 「いくよ! せーの!」


 本当に、何の準備もさせずにいきなり指を出させた。これって、指の出し方で、不利になる番号もあるんだけどね。


 で、結果は、俺二本。サヨ二本。ロッカク一本。トーイ四本だった。


 トーイ? 妖精の国を見たかったみたいだね。


 「と、言う事で、ミィと天と地竜の居た世界へ、息抜きに行くことに決定。出来るだけ短時間で済ませるようにするけど、魔石を薬草や、その他の薬になりそうな物とか、換金して転移の魔道具や、生活必需品を買うとかを、しっかりやっちゃいましょう。何か質問は?」


 「アレンストの方には、一言言っておかないんですか?」


 「俺の考えだと、ほとんど俺たちの出番は無い状態にしたよね? 新たに事態が進展しても、ある程度自分たちで解決できるように、ってのは言っておいた気がするんだけど、伝わっていると思う?」


 「それは伝わっていると思います」


 サヨがそう言い、トーイも肯定する。ロッカクは、余り人前に出なかったモンね。


 「なら数日は、放っておくという試練を与えてもいいんじゃないかと思うんだけど?」


 「ですね」


 と言う事で、俺は天と地竜の世界へのゲートが有る場所に設置した転移の魔道具を起動させた。


 さらにゲートを潜り、世界を移動した。


 「さて、ミスターのところはともかく、ゼンチェスには転移の魔道具とか置いてなかったんだよね」


 四人がそれぞれのビケを出し、王都へと進むことにする。今回はロッカクもこちらに同行させることにした。


 四台のビケ。うん、珍走団としての体裁も整ってきたね。ならば…。


 「ケンタさん! 時間も無いので最短距離を静かに進みましょう」


 え? サヨさん? それってどういう意味ですか?


 俺の疑問を余所に、ビケは静かに王都を目指して進んだ。解せぬ。


 途中の村を無碍に通過して王都に到着。途中の村は、ビケが無かった頃、馬車に乗るのに寄った事しかなかったなぁ。


 王都に到着したけど、そのまま外壁の門をくぐらず、少し離れた森へと向かう。


 そこで、トーイとロッカクに実戦訓練を施すことにした。


 「ええ? いきなりですかぁ?」


 「月光の世界でもロッカクは余り戦っていないんだから。これはいわば、ロッカクのための訓練だ!」


 と、嘯き、出てくる魔獣をロッカクとトーイに任せた。


 トーイは嬉々として戦っている。あ、サヨも参戦した。ロッカク? 逃げてちゃ倒せないよ?


 スキワーボアという魔法を使う魔獣にロッカクは苦戦している。単に土で出来た串を飛ばしてくるだけなのにね。


 ボイルドドッグの沸騰攻撃を見切ったトーイは、前後左右からタコ殴りだ。


 ローストピッグはサヨがニヘラと笑って刀を抜いたのを見て逃走を開始した。あ、間に合わなかったか。


 概ね、こんな感じで魔獣討伐が進んだ。


 そして外壁の門をくぐり、町の中心に近い位置にある冒険者ギルドへ到着。


 獲物を出し、魔石はバックで肉は卸すと言う事で話をつける。


 ギルドでは別室に呼ばれ、ポーションの製作状況を聞くことが出来た。


 なんと、既に試験販売を始めていて、効果を確かめているそうだ。それで、ポーションの権利をどうするかと聞いてきた。


 「それを、俺たちはどうするつもりも無い。ギルドが独占したければそれで構わない。実は、城には治療魔法を教えてある。それ自体は、実はミスター・ジョン=スミス氏が古い文献から探し当てたモノらしいから、それを踏まえて、冒険者ギルドがどういった未来を見ているのかを考えて決定してくれ」


 ギルドの創設者が関わった治療魔法は城に、地竜から教わったポーションはギルドに与えられた。その意味をどう取るのかが、これからの未来を決めるだろうね。


 しばらく絶句状態だったギルマスが復活するのを待つ事にした。


 「で、では、このポーションの作り方の権利を放棄すると言う事でよろしいんですね?」


 「元々、昔の人が考え出した技術だしね。後は、ギルドが独占したとしても文句は言わないし、俺たちが使う物以外にポーションは作るつもりも無いし、作り方を教えるう森も無い」


 まぁ、このポーションよりも効果の高い物をゲーム内で購入しているしねぇ。


 俺たちとしてはギルドに丸投げのつもりだけど、ギルドとしてはある意味、試されていると取っている節がある。何しろ、天竜、水竜、地竜とかと関わっている人間だもんね。


 買い取りもしてもらったので、ギルドでの用事は薬草や鉱物資源の判別方法や知識を得る事。二階の資料を読んでも、それで擬似鑑定眼に登録されたかがハッキリしない。実物が有れば直ぐにハッキリするんだけどねぇ。


 と言う事で、受付で粘って、納入された薬草とかを実際に見せてもらいました。


 実際の品と受付嬢による解説付きという贅沢な状況。後でたっぷりと卸すから許されて。


 「これが薬草で、これが毒キノコです。麻痺の毒ですが、弱めて痛み止めとして使う場合があります。ええっと、ポーションが出てきているので、役割は少なくなっていますね。これがカブレの木で、樹液を木に塗るとニスのような働きになるそうで、木工工房がたまに注文してきます。これが嫌魔草で、燻すと魔獣が近づかなくなる確率が高いそうです。これが眠りの実と呼ばれる物で、あまり強くも無いんですが油断している魔獣の餌に混ぜて眠らせるのに使うそうです」


 などなど、実際に品を見ながらだから取り止めもないが、けっこうスラスラ説明が出てくる。きっと受付で何度も何度も説明しているんだろうな。


 まぁ、それでも、実質的に役に立ったのは薬草ぐらいだったのは言わないでおこう。


 「もし、素材などを確実に得たいのであればダンジョンがお勧めなんですが、ある程度以上の実力がないと逆に得られる物が少なくなると言う場合もあります」


 「えっと、どう言う事?」


 「ダンジョンは魔獣を倒すと魔石やそれ以外の、何かと役に立つ物をドロップするという変な現象が起こる場所なんです。魔獣を倒しても魔獣の素材全てを得ることは出来無いんですが、解体する手間も無く魔石や肉がドロップとして落ちていたりするそうです。ですが、得られる物に対して魔獣が強すぎる傾向があるため、同じ物を得ようとしたら地上で獲物を探すほうが生き残り易いそうです」


 「なるほど。つまり、ドロップ品の価値に見合わない、強い魔獣がひっきりなしに攻めて来る過酷な場所だけど、連続で来る分、逆に効率は良いかも、という場所なんだ?」


 「そ、そうとも言えます。い、いえ。それを目的にダンジョンを攻める方も多いので、とりあえずの量の確保のためにはダンジョンは重宝されているそうです。

 ですが、得られる物が魔獣の強さに対して低いので無理をする方々が多く、そのためにギルドで管理する事になっています」


 「そう言った、冷静に撤退できる実力と判断が出来る者じゃないと、無駄な犠牲になるんで入場を制限している、と。

 もし、俺たちが行くと言ったら、許可は出るかな?」


 「実質的な力は、このギルドだけじゃなく、この周辺国も含めて上位に入るほどですから問題はありません。

 申請しますか?」


 許可だけの申請なんで、何時、ダンジョンに入るとかは今は決めなくともいいそうだ。ただ、ダンジョンのある場所の管理所では、予約みたいな事や、入場制限が掛かることもあるらしい。


 そこで、持っていても損は無いと言う事で申請して許可証を貰うことにした。


 申請書には色々書かなければならない項目があるらしいが、受付で代筆してくれるらしい。とりあえず俺が申告したのはダンジョンに入るときの基本人数で、これも現場で変更可能らしい。


 通達を各所に送るのに数日掛かるそうだが、この近くのダンジョンなら明日ぐらいには通達が届くから問題なく潜れるそうだ。

 とりあえず、それまでの時間潰しに、この国の周辺で強めの魔獣が出没する場所を聞いて、そこに行って狩りをする事にした。


 強めの魔石とか素材とか、金になりそうな物が欲しいからね。


 そして北東方向にビケで進んだ。地竜の話でも、ここら辺にはある程度強めの魔獣が居るので人の行き来が無いそうだ。もっとも、人にとっての強めの魔獣なんで、竜たちにとっては他の弱い魔獣と区別がつかないらしい。


 そして遭遇。


 全員でビケを降りて、それぞれが収納。自分の武器を出して構える。


 それは全身が岩で出来たような巨大なワニ。表面が岩に見えるだけで、実際は硬い鱗でしかないのだが、人にとっては剣が通じない手ごわい相手だ。

 大抵は魔法職による殲滅だけが対抗手段になるらしい。


 名前は単純にロックアリゲーター。似たような亜種も居るらしいけど、人間とは余り接敵した実数が無いので一括りにそう呼ばれているそうだ。


 地竜からそう説明を受けた直ぐ後、俺の目の前に次々と丸い記号が現れた。


 「あ、説明を受けて、実物を知ったから、鑑定モドキが仕事し始めた」


 「本当ですねぇ。あ、全部で八体って所ですか?」


 「俺の表示でも八体だね。皆は?」


 「一、二ぃ、三、…、七、八。はいぃ八体確認いたしましたぁ」


 トーイが悠長に数えて確認していた。うん。ロックアリゲーターって凄く遅いんだよ。


 「遅く見えても、噛み付き攻撃の時の一瞬は凄く早いからね」


 地竜からの注意喚起。油断は禁物って事だね。


 「とりあえずノルマは一人二体。財布にはならないようだから、魔石狙いだけでいこう」


 「「「はい!」ぃ」」


 そして戦闘開始。


 終了。


 あれ?


 「早くない?」


 「いえぇ、弱かったですよぉ?」


 「ですねぇ」


 うーん。俺たちが強いのか、この魔獣が弱かったのか。


 「まぁ、いいか。じゃあ、お楽しみの、ワクワク、剥ぎ取りタイム! ちゃっちゃっと魔石を抜き出してね」


 「「うう~」」


 素材として使えそうにも無い魔獣をギルドに持ち込んでも、解体費用だけで足が出ちゃう。なら、自分たちでやる方が無駄が無いよね。


 ひっくり返して胸を縦に切り裂き、心臓辺りに手を突っ込んで硬い石を取り出す。


 素材を傷めて価値を減らす、とかの心配が無いから楽な作業だよね。水を生み出す魔道具で手を洗わせるという手間が掛かったぐらいだ。


 さて、ここに残った岩のようなワニのお肉はどうしよう。まぁ、俺たちはここから移動するだけだから問題なし、と放置する事にした。


 そこからは歩いて探索。


 足元を見ると、薬草やキノコなど、ギルドで説明を受けた物が見つかる。それらを採取しながら移動し、説明が現れなかった珍しい草などを地竜に質問したりしている。


 地竜も万能では無い、全知でも無いと怒りながらも、知っている知識は気軽に披露してくれている。


 おかげで、魔力を溜める多肉植物を知識に登録することが出来た。当然採取するけど、当面はアイテムボックスで眠る事になるかも。


 そして第二魔獣発見。


 でもスキワーボアだった。さっきもロッカクが相手して、ギャグを取りながら倒した魔獣だ。


 「ギャグを取ったつもりはありません」


 何故かロッカクのツッコミ。何時の間に読心のスキルを?


 「声に出てましたよ」


 「この世界は思索を声に出すと他人に聞かれてしまうらしい。異世界とは恐ろしい」


 「今度も僕が行くんですか? まぁ、構いませんけど」


 俺を無視して話が進む。一体何が起こっているんだ。


 俺が一人で驚愕している内にロッカクが突っ込んで行って、金属製で棍棒よりも凶悪な魔法を杖を振りかぶる。


 スキワーボアの土魔法で作られた串が放たれるのを、ロッカクは左に飛んで避けた。その場所に、なんと次なる串が飛んで来る。スキワーボアの様子を見ると、更に幾つもの串を出して走り迫ってくる。


 「普通のスキワーボアじゃ無いのか?」


 「スキワーボアの上位種だろう。まぁ、ほんの少しだけ進化していると言うところだろうな」


 天の冷静な分析。


 「じゃあ、スキワーボア(+1)って感じか」


 俺がそう言った途端、俺の目に見えている鑑定モドキの表示が変わった。

 なんと、俺が言った通り(+1)が付いてたよ。


 「あ、名前の所が変わりました」

 「はいぃ、プラスいちと付きましたねぇ」


 「俺が言っただけで変わった?」


 「公としての記録と言うわけではなく、個人の知識としての認識だからだろう」


 「ああ、だから認識って付いていたわけだ。もし俺が、あれは『天の涙 地の慈しみ』とかいう名前だ、って言えばそうなってたのかぁ」


 「ケンタの認識でそれで納得するのであれば、そうなるだろう。だが、我はその認識は受け入れられん、アレはスキワーボアだ、と思っていれば我の方には反映されないとは思うがな」


 「やっぱりそうかぁ。残念無念。俺が新種を見つけて名付けしても、それが世間に認識されるわけじゃ無いって事ね」


 「ケンタさんの名付け。って見てみたいような…。あ、これが怖いもの見たさ、なんだぁ」


 俺の評価について…、いや、やめよう。とにかく、その間にロッカクは順調にビートを刻んでいる。


 「踊ってません!」


 「全国レベルのスコアを狙っているのに、その努力を見られたくないというロッカクのために、見てない事にしよう」


 通常は一本の串を飛ばしてくるスキワーボアだけど、このプラス1は数本の串を同時に繰り出す。その串の攻撃を避け、時には叩き落して、ロッカクは杖の届く有効射程距離に入ろうとしている。


 「ロッカクー。魔法は使わないのー?」


 「ケンタさんみたいに、ゲージを溜めずに出すなんて出来ません!」


 あ、そういえば、ゲームの魔法しか練習させてなかったね。一応、俺の魔法の使い方は見て知っているはずだけど。


 「えーと、サヨ? トーイ? さっき抉り出した魔石を一個、出して手に握って」


 サヨとトーイはお互いを見てから、俺の指示通りに魔石を握った。


 「そう、その状態が魔法の杖という魔法の媒介をしてくれる道具を持ったのと同じ状態になるんだ。

 そして、慣れれば詠唱破棄とか出来るんだけど、今は言う通り繰り返して。

 『理に従いて全ては火に還る 世界の柱よ 我が力によりてその有り様を変えよ』」


 「えっと、いきなり長い。こ、ことわりに従い?」


 「要は、固体から流体、そして気体を経て炎のようなプラズマに還元されるのが理屈だというわけ。だから、火に変えるのが理だと言っているんだ」


 「はい。えっと、火に還る世界の理よ」


 「世界の柱ってのは、基本法則。例えば、水を火であぶれば、水は気体になるという当たり前だけど、揺ぎ無い世界の常識にして、この世界を構成している要因でもある」


 「は、はい。世界の柱!」


 「そして、魔法を使う者の魔力で持って、その常識の一部を少しの間だけ変えちゃう」


 「わ、我が魔力で常識を変えよ?」


 「初めから行くよ。

 理に従いて全ては火に還る 世界の柱よ 我が力によりてその有り様を変えよ 

アイスクル ランス!」


 そして俺の左手から、氷の槍が一本、ロッカクの戦っている猪に向かって飛び出した。


 あ、スキワーボアの土魔法の串を尽く砕いてボア本体に突き刺さった。


 ピギャァァァウ! とかいう、豚みたいな鳴き声だ。あ、猪だった。


 ほとんど死に体だけど、一応まだ生きている。土魔法の串は出さなくなったけど、しっかりと四つの足で立っている。


 「サヨ、トーイ。止めを刺してあげて。一応火も使えるけど、森の中だから火以外でね」


 「「理に従いて全ては火に還る 世界の柱よ 我が力によりてその有り様を変えよ 

アイスクル ランス!」」


 二人は詠唱を重ねて、同時にツララの槍を打ち出した。


 「え?」


 それは俺の数倍の太さと勢いで、一瞬でスキワーボアの居た場所を抉った。


 俺のツララで避けていなければ、ロッカクも消えていたかも。


 跡地には地面が抉れた後が真っ直ぐ続いている。


 「な、な、な、なんですかー!」


 ロッカクが本気で脅えた声を張り上げている。うん。気持ちは判る。

 その魔法を打ったサヨとトーイも驚いているしね。


 「えっと、天? これって、詠唱を重ねて、共鳴しちゃったから、倍以上の威力になっちゃった、って事なのかな?」


 「うむ。我も驚いたが、ケンタの言う通りのようだ」

 「ケンタ、ケンタ。共鳴ってどんな現象を言うの?」


 地竜にとっては、『共鳴』という言葉の方が興味あるらしい。


 「共鳴、ってのは『ともなり』とも言って、音に音をぶつけた時に、二つの音を合わせた以上の音に強化されてしまう現象なんだ。それには特定の音の種類が必要で、全く同じ音でも、ぶつけ方では音が消えちゃうこともある。そういう、音に関する事象の一つで、音と言っているけど、振動も含まれる話なんだ」


 「ふーん?」


 「まぁ、詳しくは、ゲーム世界に戻ったときに、ネット検索で調べてくれ」


 「わかったー!」


 「単純に音の強化、と言うより魔力の強化であったな」


 天は、実際に見た事象から、共鳴の意味を察しているようだ。


 一応気になったので、その場で再びサヨとトーイの同時詠唱を試してみたが、共鳴現象は起きなかった。たぶん、本当に微妙な加減が原因なんだろうね。

 ついでにロッカクも火に還るという魔法を試させて、とりあえず三人ともが詠唱破棄で魔法名だけでの発動は出来るようになった。


 威力は小さくなるけどね。まぁ、魔力の温存という意味では使えるだろう。


 で、ドッカン、ドッカンと魔法を撃っていた所為か、周りから魔獣の気配が消えた。当然だよねぇ。


 仕方無しに大きく移動したら、ベッサークディアーの群れと遭遇。


 ヤバイです。目が逝ってます。ベッサークです。バーサークとも言います。ベルセルクと言うのは強引な言い方だったかな。とにかく凶暴な鹿です。ヘラジカ並みにでかいです。しかも群れです。二十頭はいないと思うけど、近い数はいると思う。文字が重なって認識鑑定でもハッキリしません。


 「は、はははは~。帰ろうか? 帰りにコンビニ寄ってお弁当買いたいし」


 「僕はおでんでお願いします」


 「おでんかぁ。じゃあ、ちくわぶ、牛すじ、黒はんぺん、じゃこ天にトマトでお願い」


 「どうして、地域色が強くて、一箇所じゃ揃わないのばかり選ぶんですかねぇ」


 おでん談義に花が咲く事は無かった。ベッサークディアーが取り囲んできたから。


 「仕方ない。お肉は美味しそうだから、首狙いでね。角も使えそうだなぁ」


 言えた言葉はそこまで。角を突きつけ、突っ込んできたベッサークディアーを避けつつ、全員が散開する。バラケさせられた、とも言う。


 乱戦になると小銃は使い難くなるので、得物はナイフと魔法。天の強化魔法は取って置きとして、通常の戦闘力で対応することにした。


 でも、ベッサークディアーが強化魔法を使ってくることは計算外だった。しかも速度優先の強化だ。人の反射速度では対応出来そうも無い。


 そして、俺たちは何度も、何度も、その角で弾き飛ばされる。


 そう、何度も、何度も。


 「いい加減、飽きてきたね」


 レベルアップ? の恩恵と自動防御のおかげで、飛ばされる以外のダメージは無い。まぁ、何度も掬い上げられて飛ばされてるんだけどね。

 で、いい加減に動きにも慣れたんで反撃開始。すでにサヨとトーイは数頭を打ち倒している。俺も、ナイフで鹿の首を切りつけ、出血死を狙う。


 風魔法で切り刻むのって難しいんだよ。


 部分的に真空を作れば、そこで皮膚が破裂する、なんて言うのは都市伝説だしね。


 風魔法で似たような事をしたければ、忍者が使うような十字手裏剣を風で回転させ、風で操りながら手裏剣をぶつけていく、という方法しかない。

 細かい砂をつむじ風で回転させる、なんてのは、攻撃に使えるほどの威力を持たそうとすると、砂が回転の遠心力で飛ばされちゃうからねぇ。


 風を使う他の方法だと、空気を止めて窒息を狙うとか言うのはある。相手の肺活量次第になったりするけど。


 真空を作って強引に窒息を狙う、って方法もあるけど、真空を作るってのはかなりの力が要るんだよ。何しろ大気圧との勝負だからねぇ。

 昔、おもちゃの注射器で口を閉じ、強引にシリンダーを引き抜こうとしたことがある。結果は、ほんの少しだけシリンダーが動いたような気がしただけ。それだけ、この大気圧の中で真空を作る事が大変かを思い知らされた。


 だから、風魔法で真空を作ろうなんて、やるつもりも無い。


 やるのは、風魔法をぶつけて、高く放り投げる事だけ。いくぞ。高い、たかーい。


 「おお、良く飛んだなぁ。あ、ふぁぁぁぁ!」


 注意喚起はマナーだよね。


 ロッカクたちも真似しだした。森の木々の遥か上まで鹿が放り出される。そして、体勢を整えて足から着地しようとするが、重力加速度の法則に負けて、足を骨折していく。


 速度重視の強化をかけていても、足が折れてたら無駄になるよね。これが肉体強化であったのなら、骨格ももう少し丈夫になっていたかも知れない。


 まぁ、その時は、飛ばす高さが高くなるだけだけど。


 墜落死せず、生き残ったのの止めを刺し、アイテムボックスに収納する。いくら凶悪な魔獣とはいえ、殲滅させるのには毎回慣れない。ゲームを始めた動機自体、これが目的だったようなモノなのにねぇ。


 「さっさと収納して今日は戻ろう。ギルドに卸してから、宿を取ろうと思う」


 「了解しましたー。今日はどんな宿に泊まります?」


 「どんな所でもいいけどねぇ。下手したら、ここで自前のベッド使って、天に結界を張ってもらった方が快適、って場合もあるのが難点かな」


 「ああー、そうですねぇ」


 この中で、この世界の宿屋を知っているのは俺とサヨだけだ。


 「まぁ、せっかくの異世界だから、この世界の常識も経験しておくべきだろう」


 と言う事でビケで移動。暗くなる前にと、ちょっと急いだら、夕方前には到着できた。


 早速ギルドに今日の獲物を卸す。まだ、午前中の獲物もサバき切れていないとの事で、いつものように預かってもらうという形にした。でも、ベッサークディアーなんて、数年に一度、一頭だけ卸される事が、有るか無いかという魔獣で、それがいきなり十八頭というので対処に困っていた。

 どうやって倒したんですか? と聞かれたので、素直に風魔法で巻き上げて高い所から墜落させたと言ったら、聞くんじゃなかったという目をされたのは何故だろう。


 この国で使える金も残り少ないので、どこで宿を取るか考えていたら、お城からお誘いがあるという話を持ち出された。たぶん、門番辺りから俺たちが来たのを知らされたんだろう。しかも城からの呼び出し、という体裁だと、前回、酷い目に会っているから、お誘いとなったらしい。


 「前回、何があったのでしょうかぁ?」


 「権力者の上から目線での呼び出しが有ったから、全戦闘力をもって堂々と城に喧嘩を売ってきた」


 「まぁ、それは残念でしたぁ」


 あ、参加したかったんだね。


 「まぁ、今回は半月以上間が空いたと言う事で、会って経過報告を聞きたいという所だろうね。

 うーん、城の食事とお泊りが出来るかな?」


 「それは是非、お城へ行きましょう」


 サヨが乗り気だ。ここのお城は、行って、中を見た、という程度でしかないから、じっくりと落ち着いて眺めたいんだろうな。トーイもなんとなく乗り気だ。


 「とにかく、挨拶ぐらいはしてこようか」


 と言う事で、テロテロとビケでゆっくり移動。


 この国は、外周を壁で囲んでいて、その内側に城の壁が城を囲んでいる。今向かっているのは城の壁に作られた門。そこまで行き、門番に来訪を告げる。

 で、通常の対応がされるので、待合所代わりの屋敷に案内されて、そこに馬車が到着するのを待つ。


 「これです。これがお城ですよぉ」


 とサヨが喜んでいる。トーイも同じようにはしゃいでいる。


 「これがお城です、ってのはどういう意味です?」


 ロッカクはお城自体、見ていなかったなぁ。


 「前回は、ビケで門番吹っ飛ばしてそのまま本丸に乗り込み、ショットガンで謁見の間の扉を叩き壊して乗り込んだからねぇ」


 「うわ。それで、よく今回は普通の対応してもらえていますねぇ」


 「まったくだ。これが七不思議ってヤツなんだろうな」


 「七不思議に失礼ですよ」


 俺とロッカクの掛け合いに、部屋付きのメイドさんも苦笑いだ。


 それからしばらくして馬車が到着したと言う事で外に。そこには四頭立ての馬車があり、対面座席式なのに六人は余裕で乗れる馬車があった。


 待合で使った屋敷もそうだけど、まだロココ調のような装飾の形式が出来ていないため、王家の紋章を飾る装飾についても行き当たりばったり感が否めない。それでも、しっかりとした職人の技という技巧は見て取れるからたいしたものだ。


 絵に書いたような執事さんが馬車に誘ってくれる。


 執事さんは馬車の御者と一緒に御者席。俺たちは余裕を持った馬車の中で寛いで、今回の目的地である陛下の屋敷に向かっている。


 「陛下の屋敷って、城じゃないんですか?」


 「この世界の、この国では、城は本丸としての機能だけで、王家の方々の普段の生活は別々になっているらしいね。今回行くのは、陛下とその家族が住む王家専用の屋敷って事らしい」


 「ケンタさんは、その屋敷に行ったことがあるんですか?」


 「天と出会った時の、エルフの騒動の時に、二日ほど泊めてもらったかな」


 「おお! 既にお城経験者!」


 「期待していいよ。朝のトイレなんか、ベッド脇に態々持って来てくれるからねぇ」


 「え? マジデスカ?」


 「夜のお風呂とかも、メイドさんが数人、付きっ切りでお世話してくれるよ」


 「「「………」」」


 「あ、ロッカク。メイドさんにエッチな事を強要しちゃ駄目だからね」


 「しませんよ!」


 「で、ケンタさん? どう対応すればいいんですか?」


 「しっかりと、一人で出来るから一人でしたいとハッキリ言う事だね」


 「トイレに関しては、出来るならしてもいいとは思うけど、このアバターだと必要なさそうだから、下げてくれでいいとは思う」


 「しっかりと食べることは出来るみたいなのに、不思議ですねぇ」


 「本当に食べているのか? という疑問もあるけどね。まぁ、元々の現実の体は、表面的な感覚以外は個人のゲームアダプターが代理管理してくれているわけだしね」


 「確か、ゲーム内で驚いたりした場合に、現実の体が同じように反応しないようにしてあるんでしたよね」


 「四倍の速度の世界だから、それに合わせて反応していたら、体が疲弊して壊れちゃうからね。しかも、今の俺たちはそれ以上の速度で動いている事になるからね。一瞬でも反応したら、壊れるどころか死んじゃうよ」


 「ですよねぇ」


 そこで王家の私屋敷に到着した。


 執事役の男が聞き耳を立てていた事は知っているけど、意味は絶対に判らないだろう。


 馬車を降り、エントランスの扉をくぐると、ポーポーの世界で手に入れたロボットボディを操るミィが挨拶してきた。


 「久しぶりだな」


 「久しいとは言っても半月だろう。でも、まぁ、久しぶり。ミィは初めてになるトーイを紹介しておこう」


 ここではまず、ミィとだけ挨拶。それから別室まで行って、女王陛下とその旦那さん、子供たちに挨拶。一緒にいる側使えたちには一応会釈で挨拶。

 そして今晩寝る部屋へと案内され、それから食事に呼ばれる。


 かなり面倒な手順で、いい加減に簡略でいいと思うんだが、何故かサヨは『これがいいんじゃないですか』と訳の判らない事を言っていたりする。


 しかし食事内容では凹んでいた。


 基本的に調味料不足で、王族だから胡椒ぐらいはたっぷり使えるけど、塩味が基本。食事の前にサヨには、アイテムボックスの中の食料品は絶対に出すな、と釘を刺しておいたが、言わなければ盛大にぶちまけていただろう。


 気持ちは判るんだけどねぇ。


 定期的に安定供給出来無い物を出す事の非道さよりはいいだろう。


 作法も判らないので、基本は真似っこ。一応テーブルマナーは実践はともかく、知っていることは知っているけど、この世界のこの国で通用するかは判らない。なので、諦めて、自由奔放にする事にした。


 まぁ、この世界でもマナーを決まり事として扱う慣習は薄いのは助かった。ある意味、未熟って事なんだけど、俺たちにとっては助かる。


 食事もコースとかも確立していないし、当然デザートも無い。でも、ここの人たちにとってはこれが当たり前なんだよね。


 食事が終わったら、部屋を変えて歓談の場に。


 ここで漸く、どういった旅をしていたとかの話になる。

 一応異世界の話は秘密になっているし、ミスターの事も内緒になっているので、所々誤魔化しながら、魔人との戦いを振り返る。

 正直、これが一番辛かった。


 風竜や地竜までもがやられたくだりには驚いていたが、ミィだけは俺の肩のぬいぐるみを見て納得していた。


 何とかつじつまを合わせて話を終了させたところで就寝の時間。それぞれが各自の部屋に戻っていく。


 俺たちも部屋に戻ったけど、自然と全員が俺の部屋に集合し、そこにミィが加わった。


 そして情報の摺り合わせ。


 四人目のトーイの経緯では、ミィもマージの事を知っているので聞き取りも真剣だった。自分の子孫に王権を移譲できて、ある程度満足できる結果に眠りについたという所では涙ぐむしぐさも見れた。

 涙を出す機能があるのかは未確認だったがどうなんだろう。


 で、息抜きというか、気持ちのリセットと、魔石や魔道具を収集するためにこの世界に来たと報告して、この日は解散。各自が各自に割り当てられた部屋で就寝となった。


 翌朝。


 朝食は各自が好きに摂るという形式だ。

 元々、一日二食が当たり前なんで、十時前後に摂るのが一般的だ。でも、起きて、そのままベッドで食べると言うのも有りらしい。まぁ、マナーと言うよりお行儀が悪いという認識みたいだけどね。


 俺たちは九時ぐらいに自然と集まったので、そこで軽い食事を出して貰い、早々にお暇する事にした。

 今日はダンジョンのある北の集落に行く予定もあったしね。


 ミィを呼び出して貰い、ミィ経由で女王陛下と面会。そこでお暇を告げて外に出る。ミィに城壁の門までの馬車を手配してもらったから、恙無く城を出る事が出来た。


 「あ~、お城でしたねぇ~」


 サヨは堪能したようだ。


 「僕も、まぁ、感動はしましたけど、もう、お腹一杯と言う感じです」


 男性陣はお腹一杯。女性陣は別腹だから、たまにならOKらしい。人類永遠の謎の『別腹』理論が出てしまっては、追求するにはサスクワッチを探す事よりも難しいだろう。この世界になら居そうだけどね。


 ビケで走り、王都の外壁の門を出て、さらに北に走る。


 目指すはダンジョンのある北の集落。

 というか、ダンジョンがあったから人が集まって、集落もどきを作っていると言うのが正解だろう。町の店の割合も、宿、武器・防具関連、食事処、花街という比率だ。これにダンジョンを管理しているギルドが一軒、雑貨屋が一軒、魔法道具関連が二件、ギルド直営の市場が一箇所ある。

 ダンジョンが無くなったら、簡単に消滅する集落もどきと言うわけだ。


 集落のダンジョン管理のギルドに到着し、登録と説明を聞く事にする。


 「___転移の魔道具に関しては以上です。それと、ダンジョンの中で獲得したドロップ品は、全てギルドに売っていただく事になっています」


 「え? 全てですか? もしも欲しいものがあった場合は?」


 「その場合は一度売却してもらい、改めて購入を申請してもらう事になってます」


 「その時に、誰かに買われてしまうと言う事は?」


 「当然あります。買い取り希望が複数あった場合は、提示金額の一番高い者が落札する事になっています」


 あれ? なんか違う感がすさまじい。欲しい物を苦労して獲得しても、後から金で横取りされるわけかぁ。


 一度皆の方を見ると、渋い顔の列だった。干しとけば甘くなるかな。


 俺たちは、金よりも資材の方が欲しいと思ってる。なので、このダンジョンに入る意味がほとんど無い。

 しかもこのギルドは、冒険者から低額で買い取り、落札制で高額で売っているわけだ。その差額で経営をしていると言えば聞こえはいいが、商人にだけ都合がいいシステムだとも言える。


 もしかしたら、入札も商人に有利になるように操作しているかも知れない。


 「地竜? この近場で、ギルドと言うか、人に管理されていないダンジョンとかあるかな?」


 「けっこうあるよぉ。西に山四つ越した所なんて、なかなか手ごわい魔獣が出て、その分、面白いほどいいものがドロップするみたい」


 「? ドロップって、効率が悪いんじゃないのか?」


 「何度も人が入っている所はね。長く放置されてるとドロップ品は良くなるんだよ」


 「ダンジョンって、放置されると溢れるとか聞いたような気がするけど」


 「溢れるよ。でもそこのダンジョンは周りを山で囲まれているから、そこから出てくるのは小数だね。多くはその囲われた場所で勢力争いをしているみたい。その分、強い上に経験豊富ってのが多いよ。で、溢れるたびに、ダンジョンの中から出た魔獣と、外で競い合っていた魔獣とで乱戦になるみたいだね」


 「その結果、その周りは普通の魔獣で、あまり脅威にはならない、ってわけかぁ」


 「うん。囲われた中は昨日のベッサークディアーが可愛くなるレベルかな。逆にダンジョンの中の方が弱いらしいからね」


 「俺たちとしては素材集めが目的みたいなものだから、ここのダンジョンに潜る意味は全く無いよね。と言う事で、そっちのダンジョンに潜ってみよう」


 今までダンジョンの説明をしていた受付の男性が、俺の言葉に目を見開いている。ほとんどハッタリで言っていると思っているのか、それ以上の驚きは無いようだ。


 「と言う事で、俺たちはここのダンジョンには入りません。ゼンチェスのギルドにはそう伝えて置いてください」


 王都のギルドには、申請関連で急がせてしまった経緯があるからねぇ。一応、一言入れておいてもいいだろう。


 そして、ギルドを出てビケに跨り西を目指す。


 高度を上げてから、天と地竜の風魔法で後押しする作戦にした。天が前方の空間に前進する気流を生み出し、地竜が後ろから前へと流れる気流を生み出す。すると、後押しされたビケは面白いように加速した。


 ビケはエアバイクっぽく見えるが、気流では無く浮遊魔法で浮かんでいる。そのため、周りで風が乱れても、基本的には影響は少ない。まぁ、強いダウンバーストにでも巻き込まれたら墜落するかも知れないけどね。


 四台のビケをまとめて風の範囲に入れたため効率もよく、約一時間で山を三つ越えることができた。


 そして一度降りて、歩いて山肌を進む。念のため、山を越えない辺りに転移の魔道具の片割れを置く。無駄になりそうだけどねぇ。


 そして山を越えた所で、地竜の言っていた意味を痛感する。


 「恐竜ランドだ」


 ジェラ期の公園とか、サファリパーク恐竜版とかの世界だった。


 名前も判らない、なんとかレックスと言う感じの、鳥から羽毛を取り除いてワニの皮を貼り付けたような魔獣が喰い合っている。一応同族系統とは争わないみたいだけど、少し違う形態だとそれだけで捕食対象という感じになるようだ。

 他にも、ライオンだと思うけど、体中にハリネズミの針を持ったものや、いかにもなバッファローなんだけど、背の高さだけで五メートル以上というもの。チンパンジーに強引にゴリラの太い腕を取り付けて、体を象並みにしたようなもの。ワニのような口を持つ狼、などなど、異形の魔獣のオンパレードだ。


 「なるほどぉ。ダンジョンが溢れて魔獣が出てきても、この場所じゃ、出て来ない方が良かったって後悔するだろうねぇ」


 皆も同じ意見らしく、コクコクと頷いている。


 「さて、ダンジョン内は外より弱いかも知れないけど、外からダンジョンにたどり着けないと本末転倒というわけだ。だから、外の魔獣を倒しながらダンジョンの入り口を探して進もうと思う。基本は全員で戦うけど、ロッカクは補助に徹してもいい。その場合は魔獣を収納する役割も頼みたい。バラけ無い様に一塊で、俺が先頭、ロッカクが最後尾で」


 俺の得物は小銃なので、後方から仲間を避けながら、というのは苦手だ。だから先頭で、どんどん倒していく。よほどの硬い魔獣じゃなければ単発発射でいいかもと思っているし、出来なければ三点バーストだ。切り替えは一瞬で出来るから便利なんだよ。


 サヨとトーイは弾切れが無いので、もしもの時はかばってもらうつもりで居る。まぁ、マガジンの弾切れとかなったら、天に結界を張ってもらうつもりだから問題ないだろう。


 「さて、行こうか」


 そう言って、険し目の山を越えて、砂利の山肌を滑るように降りていく。


 ちなみに鑑定モドキはオフにして、周辺探知だけを起動させている。鑑定モドキって、目の前が五月蝿いんだよ。煩い、じゃ無く五月蝿い。読み方は同じでも、マジでハエが目の前にブンブンって感じで表示されるから、戦闘には向いてないね。


 そして、砂利の山肌から木が疎らに生えているエリアに入っていくと、魔獣が俺たちに気付く。


 「地竜。面倒臭いから、軽く威圧を掛けてくれるかな。それで逃げないようなのだけ倒して行きたいから」


 「わかった~、軽くだね~」


 同時に何頭かが離れていくのを周辺探知の表示の中に見た。


 でも、地竜の軽い威圧で怯まなかった方が多い。これは覚悟しないとね。


 そして、俺たちを睨んで叫び声を上げている大猿っぽい魔獣に向かって小銃を発射。距離もあった事から落ち着いて狙う事が出来、一発で頭を吹き飛ばした。

 見えているこっち側は余り変わらなかったけど、後頭部の方でスプラッシュ! してんだよ。銃の発射実験とかの動画が有るけど、あれって本当だったんだな~、っと感心したよ。


 やや距離のある前方は俺。左右から回り込んで来る魔獣にはサヨとトーイで対応。ロッカクはアイテムボックスへの収納以外は暇そうだ。真後ろから、ってのが危険なんだよ?


 そのうち、直接的に狙ってくる魔獣は少なくなった。


 どちらかというと、俺たちを狙って、意識が俺たちに向いた魔獣を、別の魔獣が狙うという構造が出来つつあった。

 そう言った魔獣を狙うのもいいけど、倒したのをロッカクが回収に行くとかが危険なので、あえて無視する事にした。


 そして、何故か魔獣が襲ってこない状態になった。


 海で言う凪みたいな状態かな。


 丁度いいので天に結界を張ってもらい、マガジンへの弾込めを始めた。


 一つのマガジンには弾丸が三十発。それが五つあるけど、ここまでで三つが空になった。つまり、九十発の弾丸をマガジンに詰め込まなければならない。一発ごとに位置を合わせて、やや強めに押し込む。詰め込み方としては、横幅が弾丸を二個並べるにはやや細い幅になっているため、左右交互にずらしながらねじ込んでいくという形式を取る。

 これにより、二列で詰め込むよりも送弾がスムーズで、一列よりも多く入る。


 その分、ほんの少しだけど余計に気を使うことになるのは仕方の無い事だろうか?


 マガジンを満タンにしても、魔獣の凪は続いている。というより、遠巻きに見ているだけという印象だ。


 「どう言う事だと思う?」


 「はっきりはせんが、縄張りの境界みたいな印象だな」

 「あ、この近くにダンジョンの入り口があるんじゃない?」


 「外の魔獣にとって、中の魔獣ってたいしたこと無いんじゃなかったっけ?」


 「中から出てきたのならそうであろうが、外から中に入るのは別ではあろう」


 「あっ、そうか。出てくればタコ殴り出来るけど、入ればタコ殴りされてしまうわけか」


 「おおよそ、その様な意味の縄張りだろうな」


 「なら外はこんなもんとして、中に入ってみようか。入り口はどこら辺か判る?」


 「おそらく、あの辺ではないか?」


 天の丸い腕が伸ばされた先は、何の変哲も無い茂みだった。


 「ダンジョンって、こう、ゲートみたいに入り口っぽくなってないの?」


 「そう言ったモノもあるし、ああいう場所そのものというモノもある。大抵は、大きな魔獣が出てくる時に壊してしまうから、ああいった場所タイプになることが多いな」


 「なるほど。まぁ、出てこられるのであれば問題無いな」


 銃弾の補充も終わったので準備万端。俺たちは初のダンジョンへと潜っていった。

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